ベック 『オディレイ』 ロード・オンリー・ノウズ 歌詞考察

歌詞考察
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オディレイの意味

スペインのスラングに「Orale!」というものがある。

これは、「わーお!」とか「行け!」等の感嘆を表す言葉らしい。

『オディレイ』セッション中に缶ビールを開けるときに、バンドメンバーはこの言葉を掛け声にしていた。

“ロード・オンリー・ノウズ”はもともと“Orale”というタイトルだった。それが、エンジニアのミスで“Odelay”と表記されてしまった。こういうハプニングを見逃さないベックは、Odelayという言葉を気に入り、アルバム・タイトルにまでしてしまったということだ。

ハプニングといえばフルクサス、フルクサスといえばベックの祖父、アル・ハンセンが在籍していたアートグループだ。ベックはアル・ハンセンの追悼式で、ハプニングによって生まれたこの曲を歌っている。

この曲はベックにとって、「別れの挨拶の曲」らしい。

ロード・オンリー・ノウズ 和訳

1本しか残ってないあんたの指が ドアを差してる

神様の置き土産を あんたは当たり前だと思ってる

だったら俺が そいつをまとめて売りに出してやる

無料の食事券も窓から捨ててやる

やましい気持ちごと刑務所にぶち込んでやる

神様だけは知っている そろそろ時間がないことを

分別がなけりゃ 遠慮することもない

勝手に電話しな

あり金はたいちまいな

つまらない思いやりなんかドブに捨てちまいな

7つの海へと俺をいざなう

船酔いしたどこかのオヤジよろしく

あんたは何でも好きにするだろう

俺は何でもできることをする

タイタニック 最高のでき

俺の眼は怒りを帯びる

やめろよな ニュー・エイジも酒の飲める年頃なんだぜ

神様だけは知っている そろそろ時間がないことを

分別がなけりゃ 遠慮することもない

そのまま丘を登ればいい

他にとどめをさすものもなし

つまらない思いやりなんかドブに捨てちまいな

オディレイ…

Beck ODELAY LORD ONLY KNOWS ベック オディレイ ロード・オンリー・ノウズ 対訳 染谷和美

つまらない思いやりなんかドブに捨てちまいな

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」という絶叫で幕を開けるこの曲で歌われるのは、現代版のブルースだ。

1本しか残ってないあんたの指が ドアを差してる

神様の置き土産を あんたは当たり前だと思ってる

だったら俺が そいつをまとめて売りに出してやる

無料の食事券も窓から捨ててやる

やましい気持ちごと刑務所にぶち込んでやる

西海岸の貧困層の描写のようだ。「無料の食事券も窓から捨ててやる」というフレーズはチャールズ・ブコウスキーの小説に出てきてもおかしくなさそう。

神様だけは知っている そろそろ時間がないことを

このフレーズがこの曲のキモだと思う。人生は短いと歌っているベック、その短い人生の中で「生を肯定しようぜ」と、この曲では歌っているように感じる。

ブルースは哀歌だ。貧困や差別、悲惨な現実を歌う。歌われる感情は「孤独感」や「哀しみ」だ。ベックのこのブルースナンバーは、悲惨の中にいてもどんどん楽しんじゃおうぜ、というヴァイヴが感じられる。「哀しみ」と「愉しみ」が同居している。ベックはグランジやグランジフォロワーの反発として『オディレイ』を作った、と語っているように、哀しみが自己憐憫一色に染まっていない。悲惨な現実を笑おうともしている。

だからベックは、つまらない思いやりなんかドブに捨てちまいなと歌っている。

勝手に電話しな

あり金はたいちまいな

そのまま丘を登ればいい

他にとどめをさすものもなし

これらのフレーズもつらい状況を笑っちゃおうぜ、といった感情が現れている。

だから、

あんたは何でも好きにするだろう

俺は何でもできることをする

というわけだ。

ベックは『オディレイ』という言葉をこう説明する。

これは、一緒に成長していくような言葉なんだ。意味は分かってても、文語的にどう説明すればいいのか分からないような言葉さ。友だちと一緒にいてすごく愉快な時に、使いたくなるような言葉だよね

ベック ジュリアン・パラシオス著 山本安見訳

まるで、この曲、このアルバムを説明しているような発言だ。

さあ、今こそ不完全なぼくたちを肯定しよう。Odelay

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