ベック 『オディレイ』 マイナス 歌詞考察

歌詞考察
スポンサーリンク
スポンサーリンク

炸裂する“マイナス”

『オディレイ』の中で最もパンクなエナジーが炸裂している曲がこの“マイナス”だ。

プッシー・ガロアとソニック・ユースを掛け合わせたような疾走感と、ベック印のポップなビート感がうまい具合にミックスされている。

当初は“リバッタル(反論)”と呼ばれていたこの曲をプロデュースしているのは、マリオ・カルダートJr。ビースティー・ボーイズのプロデューサーだけあってヤンチャでゴキゲンな仕上がりになっている。

マイナス 和訳

酔いどれピエロの最後の生き残り

なにげに渋い顔をした犠牲者がまたひとり

荒れくれ番人どもが あんたの面目をつぶす

軟膏かかえた痔持ちの青少年

すげえや 一文無しの屍が

ゴミために転がってる

傍らには松葉づえと熊手

フューズがとんだからってトチ狂うんじゃない

相棒のコップに用足して

満杯になったら逃げりゃいい

果てしなく鍛えたマッチョの餌食になっちまえ

放つ光に感じる力 カラオケ ゲロ女

ゼロの偵察隊 合図を告知せよ

とびきりのブロンドを縛り上げろ

腐った傷口に 愛想なしのクスリ

アホは窓から投げ捨てろ

すげえや 一文無しの屍が

ゴミために転がってる

傍らには松葉づえと熊手

Beck ODELAY MINUS ベック マイナス 対訳 染谷和美

アホは窓から投げ捨てろ

この曲からはフルクサス的ナンセンスさを感じる。

歌詞だけを見ると「意味」的なものはあまりなく、批判的(アホは窓から投げ捨てろ)、挑発的(果てしなく鍛えたマッチョの餌食になっちまえ)、グロテスク(相棒のコップに用足して満杯になったら逃げりゃいい)な言葉が続く。

ぼくが好きなのは、放つ光に感じる力 カラオケ ゲロ女というラインだ。めっちゃインパクトあるし、ちょっと怖いし、グロいけど笑える。

ベックの祖父アル・ハンセンの作品に百円ライターやタバコの吸い殻で作ったアート作品があるけれど、この曲からはそれと同じ匂いがする。ゴミ箱の底に見つけた美、というか、ナンセンスの中にあるちょっとした驚異というか。

ゴミために転がってる

傍らには松葉づえと熊手

ここなんかはマルセル・デュシャンの作品を思い起こさせるなーと思って、確か『折れた腕の前に』という作品だったはず、と今調べてみたんだけど、雪かきシャベルがただ置いてあるっていう作品だった(タイトルになんの意味もないらしい)。

多分、松葉づえというワードからぼくは『折れた腕の前に』を連想したんだけど、それって安易に意味で結びつけただけで、そうなると全然アートじゃないよね。俺って浅はかだなと反省しております…。この曲やフルクサス、シュルレアリスムの人たちは安易さを拒否するところに魅力があるんだから。

果てしなく鍛えたマッチョの餌食になっちまえ

とびきりのブロンドを縛り上げろ

カラオケ ゲロ女

このあたりにはアメリカのメインストリームへの反発が現れているような気がするけれど、「これはこういう意味だろう」と言うことはできない。

意味はわからないけれど、“マイナス”の歌詞はめっちゃいい。面白いし、過激で笑える。

アホは窓から投げ捨てろなんて最高だよね!

コメント

タイトルとURLをコピーしました