グラスゴーから飛び出した物語 ベル・アンド・セバスチャン
いつまでも色褪せないメロディ。いつまでも手元に置いておきたい名作。それが、ベル・アンド・セバスチャンであり『イフ・ユー・アー・フィーリング・シニスター(邦題、天使のため息)』である。
このバンドほど、物語を感じるバンドはいない。ザ・スミスのようなアートワークに映画のような詩世界とPV(スチュアート・マードックは映画も作っている)。どこか儚くて、やわらかい雨の中を歩いているような音楽だ。
それがベル・アンド・セバスチャン、ベルセバである。
三軒茶屋に看板が剥げて読めなくなっているたこ焼き屋があって(今もあるのかな?)
〇〇&たこ焼き(〇〇の部分が読めなくなっている)
当時組んでいたバンドメンバーと、ベル&たこ焼きと呼んでいた。だけど、いつからか、たこ&セバスチャンと呼ぶようになり、最終的には「タコセバ」と呼ぶようになった。
セバスチャンがつよい!
このバンド名の由来は、ボーカルのスチュアート・マードックが、セバスチャンという男の出てくる物語を書いていた時に、そこに出てくる女の子の名前はベルがいいかな? と思いついて決めたらしい。素敵。
ぼくがベルセバを知って素敵だな、と思ったエピソードはスチュアート・マードックが掃除夫として住み込みで働いていた教会をバンドの練習場に使っていたり、バンドメンバーが仕事を持っていたり、生活の中に自然と音楽があるところ。同じグラスゴー出身のミュージシャンのボビー・ギレスピーが遮二無二、ロックスターへの道を突き進んだのと対照的だなあ、と思って、こんなバンドの在り方も素敵だなあと子ども時代に思ったのである。
さて、今回は名盤 『天使のため息』の”消えてしまいそうな僕を連れ出して”である。
ナイーブだけどどこか軽快さもある佳曲である。
消えてしまいそうな僕を連れ出して 和訳
Ooh! get me away from here I’m dying
ここから出してくれ 死にそうだ
Play me a song to set me free
自由になれるように歌ってくれ
Nobody writes them like they used to
だれも昔みたいに手紙を書いてくれない
So it may as well be me
だから僕が
Here on my own now after hours
ここで何時間もひとりで
Here on my own now on a bus
ひとりバスに乗り
Think of it this way
こんなふうに考えてみる
You could either be successful or be us
きみはうまくもやれないし 僕たちのようにもなれない
With our winning smiles, and us
僕たちの勝ち誇ったほほえみと 僕たちと
With our catchy tunes, and us
僕たちの覚えやすい曲と 僕たちと
Now we’re photogenic
僕たちは写真映りがいいんだぜ
You know, we don’t stand a chance
わかるだろ きみにチャンスはないのさ
Oh, I’ll settle down with some old story About a boy who’s just like me
ちょうど僕のような少年についての 昔の話とはケリをつけるつもり
Thought there was love in everything and everyone
すべてのものとすべての人に愛があると思っていたなんて
You’re so naive!
愚かなやつ!
After a while they always get it
もうすこしすれば いつでもヤツらは手に入れるし
They always reach a sorry end
くだらない結末にたどりつく
Still it was worth it as I turned the pages solemnly, and then
それでも僕がもったいぶってページをめくるにはふさわしい
With a winning smile,
勝ち誇ったようにほほえみ
the boy With naivety succeeds
少年は無邪気にやりとげる
At the final moment, I cried
最後の瞬間に僕は叫ぶ
I always cry at endings
僕はいつも最後に叫ぶ
Oh, that wasn’t what I meant to say at all
ああ こんなことが言いたかったんじゃない
From where I’m sitting, rain Washing against the lonely tenement
孤独な部屋を洗い流している雨
Has set my mind to wander
僕を迷わせてる
Into the windows of my lovers
恋人たちの窓の内側へ
They never know unless I write
書かなくちゃ絶対にわかってもらえない
’this is no declaration, I just thought I’d let you know goodbye’
「これは宣言じゃない さよならと言おうと思っただけ」
Said the hero in the story
と物語でヒーローが言った
’it is mightier than swords I could kill you sure But I could only make you cry with these words’
「これは剣よりすばらしくきみを殺せもするけど でも 言葉で僕はきみを泣かせよう」
Belle and Sebastian Get Me Away from Here, I’m Dying 対訳:MIYOCO H.
だれも昔みたいに手紙を書いてくれない だから僕が――
この曲の出だしはこうだ!
ここから出してくれ 死にそうだ
自由になれるように歌ってくれ
そしてこう続く
だれも昔みたいに手紙を書いてくれない Nobody writes them like they used to
だから僕が
ここで何時間もひとりで
ひとりバスに乗り
こんなふうに考えてみる
きみはうまくもやれないし 僕たちのようにもなれない
僕たちの勝ち誇ったほほえみと 僕たちと
僕たちの覚えやすい曲と 僕たちと
これはどういうことを歌っているかというと、
誰も昔みたいに(ザ・スミスのように)心に届くようなメッセージを持ったアーティストがいなくなってしまった。だから僕がひとりでやるんだ。
そんなことを歌っているんだと思う。
ザ・スミスは、スタジアムで熱狂するような聴き方をするバンドじゃない。どちらかというと、部屋でひっそり聴いて「これは俺のことを歌ってるんだ!」というような聴き方をするバンドだと思うんだよね。まるで本を読むように聴く音楽というか。
そんな世界を引き継いでいくよ、っていう歌なのかな?
自由になるためにここから連れ出してくれ! と冒頭で歌うけど、あ、俺がやらなくちゃなんだ、と決意する。そんな物語なんじゃないかな。
だって、
書かなくちゃ絶対にわかってもらえない んだから!
コメント