福岡読書会 本とワイン ①『星の王子さま』とフランスワイン

レビュー/雑記

星の王子さま

著者:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900-1944)

『星の王子さま』はフランス人の飛行機乗りによって、1941年から1943年に亡命先のアメリカで書かれ、出版された。母国フランスで出版されるのはサン=テグジュペリが没した翌年の1945年。以来この名作は毎年、全世界で読まれ続けている。

本当に大切なことは要約できない

惑星B612から地球に落ちて来た王子さまは、砂漠をさまよう「ぼく」に「羊を書いてくれ」と頼む。二人は仲良くなり、王子さまは自分の星を出てからの見聞を「ぼく」に伝える。

王様、うぬぼれ男、酒飲み、ビジネスマン、点灯夫、地理学者……。王子さまが地球に辿り着く前に、それぞれの星で出会った彼らは一様に滑稽で盲目的だ。

大人というものは何もわかっていないから、子供の方はいつも説明しなければならなくてうんざりしてしまう。

大人は大事なことは何も聞かない。

大人を相手にするときは子供は寛大でなければならないんだ。

この物語において、大人はこのように、間抜けに——意味のないことに必死で取り組んでいる滑稽な存在として——描かれる。読んでいる我々はそれを風刺として読み、こんな奴らは嫌だなと思いながら読み進める。

だからこんな台詞を見つけるとギョっとしてしまうことになる。

「バラ色の煉瓦でできていて、窓にジェラニウムの花があって、屋根にハトがいるきれいな家を見たよ」と言っても、大人にはそれがどんな家か想像できない。「10万フランの家を見たよ」と言うとようやく、「そりゃすごい家だね」と感心するのだ。

こういうことは、我々も日常でよく言ってしまっている。

港区のタワマンに住んでるらしい、東大を出たらしいよ、メルセデスの新車に乗っている……etc

これらはある意味、大人の言語であって、何も説明していない。だから、キツネが王子さまに語る「肝心なことは目で見えない」という言葉を『星の王子さま』の「テーマ」として(テーマの一つではあるにしても)受け取ってしまうのは、大人的な感性と態度で作品に触れてしまっている気がする。だって、「肝心なことは目で見えない」ということは、以前に子どもであった我々にとって自明のことだったはずだから。

本当に不思議な作品だと思う。わかったようなわからないような、一度覚えたことを忘れてもう一度覚え直しているような、新鮮でノスタルジック、明るくて悲しい。繰り返し読んでも捉えきれない気がするのは、読んでいる自分が大人になってしまったからなのかもしれない。

キツネがいいことを言っている(この作品でキツネはメンターの役割を担っている)。

「飼い慣らしたことしか学べないんだよ」とキツネは言った。「人間にはものを学ぶ時間なんかない。人間はできあがったものを店で買うだけだ。でも、友だちを売っている店なんかどこにもないから、だから人間にはもう友だちはいない」

友だちを、「文学」や「芸術」に置き換えてもいいかもしれない。あるいは真理とか。飼い慣らすというのは、きっと、自分の目で見て、手をかけ、深くコミットすることなんだろう。しかも、地位や名誉を得られる保証なく、損得勘定抜きで。

王様やビジネスマン、地理学者には無理だろう。うぬぼれ男にも無理だし、酒飲みも酔っぱらっているから無理だ。点灯夫には時間がない。

作者が物語の舞台を砂漠にしたのは理由がある気がするんだ。大人が作ったルールに縛られ、競争し、争い、疲弊し、自らの欲望にうんざりし、倦んでしまうこの地球という星は、砂漠だ。

地球から去る前に「ぼく」に話す王子さまの言葉が美しい。

「砂漠がきれいなのは」と王子さまは言った、「どこかに井戸を1つ隠しているからだよ」

要約したい欲求を堪えて、ここで筆を置こうと思う。大事なのは要約しないこと。要約して何かを語った気にならないこと。問いは問いのまま、謎は謎のまま砂漠の上に広がる無限の空に浮かべておこう。

エリック・ルイ 『星の王子さま』をモチーフにしたワイン

エリック・ルイはフランス・ロワール地方のサンセール地区トーヴネ村で、実質的にはビオロジックの厳格なリュット・レゾネ栽培でワインを造りを行い、国内外のワインメディアや、フランスをはじめとする各国のソムリエなどから高い評価を受ける造り手です。

赤いところがロワール地方
赤ポチがロワール地方のサンセール地区

自社畑を所有する「サンセール」にとどまらず、『地勢と土質が複雑に入り組んだこの地ならではのテロワールの多様性ゆえに、”近くて遠い”と言われる「プイィ・フュメ」や「メヌトゥー・サロン」、「カンシー」等の畑からも、ぜひワインを造ってみたいという思いを抑えられずに』、ネゴシアン事業を開始しました。
彼と志を同じくし、厳格なリュット・レゾネ栽培を実践する栽培家たちとの契約栽培によってぶどうを購入し、彼自身の手で醸造を行っています。


生産地 フランス ロワール
品種  ピノ・ノワール 100%
農法  リュット・レゾネ(化学肥料、除草剤、殺虫剤は一切未使用)
容量  750ml
格付  ヴァン・ド・フランス

赤い果実が詰まったバスケットのような芳醇な香りが感じられ、味わいはしなやかで心地よく、エレガント。極めてコストパフォーマンスの高いピノ・ノワール。粘土石灰質土壌。平均樹齢25年。天然酵母のみで発酵。ステンレスタンクで8ヶ月間熟成。

エリック・ルイ氏にとって転機となったのは、初のわが子の誕生を待ちわびながら、小学生の時以来、およそ20年ぶりに 「星の王子さま」 を読み返したことで訪れたと言います。
エリック・ルイ氏は、「星の王子さま」を読み返した際に「私も、いつの間にかこの物語に出てくる『おとなたち』になってしまったのではないかと、強く自問自答させられました。『本当に大切なものは目に見えない』というキツネの有名なセリフは、栽培家・醸造家としての私に改めて大きな気づきを与えてくれ、以後のワイン造りにおいて、知識や先入観にとらわれることなく、素直な心で『感じる』ものを大事にするようになりました。」と言い、自らのワイン造りへの情熱や思いを様々な取り組みに反映させ、ワインの品質を大きく向上させるきっかけになりました。エリック・ルイのワインには、「星の王子さま」の作者であるサン・テグジュペリ自身が書いた挿絵をラベルに描いていました。
2009 年のヴィンテージからは、サンセール出身の風景画家ベルナデット・モロー (Bernadette Morrot) 女史が、友人であるエリック・ルイ氏のために描いた「星の王子さま」の絵をラベルに用いています。
新しいラベルは、丘の上にあるサンセールの町やぶどう樹を背景に描いた可愛らしく、親しみやすい図案であり、エリック・ルイ氏のワイン造りに対する想いが伝わって来ます。

フランスのワイン銘醸地 ロワール地方

ワイン王国フランスで銘醸地といえば、シャンパーニュ地方、ブルゴーニュ地方、ボルドー地方が真っ先に挙げられると思う。

それに続くのが、アルザス地方とローヌ地方とロワール地方だろうか。

他にもラングドック地方、南西地方、ジュラ、サヴォワ地方、プロヴァンス地方と魅力的な地域はあるけれど、今回はロワール地方のワインについてざっくり解説をしたいと思う。

ざっくり解説 ロワール地方のワイン

・まず場所。フランスの真ん中から西のどんつきまで。1,000㎞に及ぶロワール川沿いにぶどう畑が広がっている。

・古城が立ち並び、景観が最高。

・4つの区域に別れていて、真ん中あたりは内陸性気候。海側は海洋性気候だから、同じロワールといっても多種多様。

・造られるワインの半分が白ワイン。赤よりも「白の産地」と認識されている。

・ペイ ナンテ地区、アンジュー ソミュール地区、トゥーレーヌ地区、サントル ニヴェネ地区という4つの地区にわかれている。

・ペイ ナンテ地区は一番西、下流。カジュアルなワインが多い。ミュスカデだけ覚えておけばオーケー。

・アンジュー ソミュール地区は左から二番目。色々造っているけれどロゼ・ダンジュが有名。

・トゥーレーヌ地区。右から二番目。カベルネ・フランという品種で造るシノンが有名。シュナンブランで造るヴーヴレというスパークリングワインも知ってるとエバれるかも。

・サントル ニヴェネ地区。一番東でフランスの中央(サントル)にある。フランス白ワインの代表ワインの「サンセール」と「プイイ フュメ」がある。ブルゴーニュに近い地区だからエレガントなワイン多め。

・スーパーや酒屋でロワールのワインを買おうと思ったら、ミュスカデ・セーヴル・エ・メールがおすすめ。¥1,000ぐらいで買えると思う(酒まつりで売ってた)。味わいはキリっとしていてフレッシュ。

ざっくり解説 ピノ・ノワール

・ピノ・ノワールとはぶどう品種の名前である。

・原語ではPinot Noirと書く。

・基本的に値段は高め。

・育てるのが難しい品種。

・ちなみにロマネ・コンティもピノ・ノワール。

・熱心なファンが多い。

・ブルゴーニュのピノ・ノワールが有名だけど、高いからチリ産のピノ・ノワールを買うことになる。

・フランスでのピノ・ノワールの産地といったら、1.ブルゴーニュ 2.アルザス 3.ロワールのイメージ。

・色は鮮やかで味わいは軽め。ミディアムボディと表記されることが多い。

・基本、単一で造る。

実践 色を見る

まずは色を見てみよう!

実践 香りを取る

香りの印象を自分の言葉で語ってみよう!

実践 味わう

味わいの第一印象を言葉にしてみよう!

おまけ サン=テグジュペリの曽祖父が造ったワイン

マルゴー村のブドウ畑を所有していたサン=テグジュペリの曽祖父ジャン・バプティスト・サン・テグジュぺリ伯爵は、シャトー・マレスコを購入し、名前をシャトー・マレスコ・サン・テグジュぺリとした。

シャトー・マレスコ・サン・テグジュぺリは、1855年のメドックの格付けでは品質も人気も高く、3級となるも、その後没落。スイス系の富豪、ズジェール家が窮地を救い、以降、3世代に渡って名門復活のため懸命の努力を重ねた結果、現在、畑の管理からワイン造りまで3代目のジャン・ルック・ズジェールが担当、エレガントなワインを造り出している。

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