キム・ゴードン/ノー・ホーム・レコード ディスクレビュー

音楽
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全ての音楽を吹き飛ばす最高傑作

2019年は、ベックの新作が出たり、ビック・シーフが現れたり、ライトニング・ボルトが暴力的なアルバムをリリースしたり(いつも通り)、大好きなザ・ドラムスのリリースがあったり個人的にかなり楽しめた年だったけど、キム・ゴードンの初(!)ソロアルバム『ノー・ホーム・レコード』が全てをさらっていった。もう何も言うことはない……。

サーストン・ムーアがロック小僧で詩人(つまり男版パティ・スミス)で、リー・ラナルドはインテリでアートで確かな腕を持ったミュージシャン、スティーブ・シェリーは献身的でスペシャルなドラマー、そしてキム・ゴードンはアーティストだ。前衛的で挑発的で素晴らしい。

このアルバムを聴いていると、ギター、ベース、ドラム、ボーカルといういわゆるロックバンドの基本フォーマットの意味について考えてしまう。ドラムがビートを刻んで、ベースが根音を支えて、ギターがリフとフレーズを弾いてボーカルがメロディを歌う。そのためにプレーヤーは楽器の練習をするし、作曲する時もドラム、ベースがリズムを作り、ギターを足したら歌を乗せる。みたいな組み立て方になっていると思うんだ。最近は、テクニックのあるミュージシャンも増えて、アマチュアのバンドマンの音楽も安心して聴けるものが多い。だけど、そういうのってけっこう退屈だよね。

ロックってもっと自由なものだと思うんだ。アイデアがあったら、すぐに始める!メルカリで機材を探したり、ネットで「バンドのはじめかた」とか調べる前にね。確かニューヨークの A.R.E.ウェポンズなんかは元ホームレスで、ドラムマシーンとボーカルという貧弱な形態で登場してる。機材はしょぼいけどセンス一発でなんとかしちゃってる。めっちゃロックしてるよね。

今回のキム・ゴードンのソロアルバムもそれと同じような初期衝動に貫かれていて嬉しい。誰もこのアルバムを聴いて「ギターがよかったよね!」とか「サビがいいよね!」とか言わせない破壊力に満ちていて嬉しい。これぞロックだ!とか言ったらキム・ゴードン本人に「冗談じゃないわ」とか言われそうで嬉しい。

今回のアルバムでの個人的ベストトラックは「クッキー バター」最高なタイトルだよね。

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