ルー・リード/セット・ザ・トワイライト・リーリング 歌詞考察

歌詞考察
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1996年発表のルー・リードのアルバム『セット・ザ・トワイライト・リーリング』のタイトルトラック

Take me for what I am, A star newly emerging Long simmering explodes Inside the self is reeling In the pocket of the heart, in the rushing of the blood In the muscle of my sex, in the mindful mindless love I accept the newfound man And I set the twilight reeling At 5 am the moon and sun sit set before my window Light glances off the blue glass we set right before the window And you who accept in your soul and your head What was misunderstood … What was thought of with dread A new self is born, the other self dead I accept the newfound man And set the twilight reeling A soul singer stands on the stage The spotlight shows him sweating He sinks to one knee Seems to cry The horns are unrelenting But as the drums beat, he finds himself growing hard In the microphone’s face, he sees her face growing large And the swelling crescendo no longer retards I accept the newfound man And set the twilight reeling As the twilight sunburst gleams As the chromium moon it sets As I lose all my regrets , And set the twilight reeling I accept the newfound man And set the twilight reeling

Lou Reed

セット・ザ・トワイライト・リーリング 和訳

このままぼくを連れてっておくれ

星が新しく現れつつある

長い今にも爆発しそうな破裂

その中では自身がぐるぐるとよろめいている

ハートのポケットの中

血がどっと押し寄せる中

ぼくの性器の筋肉の中 

心一杯なマインドレス・ラヴ

ぼくは新しく見つけた男を受け入れ、黎明をぐるぐるよろめく

朝5時 月と太陽はぼくの窓の下にいる

あかりが、ぼくらがおいた青いガラスにちらりと反射する   

窓の真ん前にあるやつだ

そしてこんなぼくを受け入れるのはきみ

きみの精神と頭をもって

なにが誤解されていたのか

なにが怖いと思われていたのか

新しい自己が生まれた

他のひとりは死んだ

ぼくは新しく見つけた男を受け入れ、

黎明をぐるぐるよろめく

ソウル・シンガーが舞台に立つ

スポットライトは彼が汗をかいているのを映す

彼は片方の膝をつく

泣いているようだ

ホーンは容赦なく鳴る

だが、ドラムのうなりと共に、彼はモノが固くなっているのに気づく

マイロホーンの頭の中に、彼は彼女の顔が大きくなっていくのを見る

そして次第に大きくなるクレッセンドの強音はもはや遅れない

ぼくは新しく見つけた男を受け入れ、黎明をぐるぐるよろめく黎明と共に強烈な日光がひらめく輝くうちに

クロミウム色の月が沈むうちに

ぼくは痛恨をすべてなくし、黎明をぐるぐよろめこう

ぼくは新しく見つけた男を受け入れ、黎明をぐるぐるよろめこう

対訳:鈴木ひとみ

伝説のバンド ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのシンガー

ニューヨーク・アンダーグラウンドのヒーロー、孤高のカリスマ、ロック詩人、ニューヨーク・シティ・マン……。

ルー・リードには様々な伝説と肩書がある。

1996年発表のアルバム『セット・ザ・トワイライト・リーリング』には、それらの肩書を捨て去ったルー・リードがいる。

まずは冒頭の歌詞「Take me for what I am」このままぼくを連れ去っておくれ、とCDのインナーの歌詞カードにはあるが、今のぼくを受け入れてくれ、ともとれる。

そしてこの曲で何度もリフレインされる「I accept the newfound man And I set the twilight reeling」の部分。ここが重要なはずなんだ。

I accept」ぼくは受け入れる――何を?「newfound man」新しく見つけた男を――そして「I set the twilight reeling」ここの訳が難しい。

そもそもtwilightとは何なのか? 辞書を引いてみよう。

twilight 日の出前・日没後のたそがれ(時)、薄明、薄暮、(薄明に似た)微光、(全盛期・栄光・成功の後の)たそがれ(の状態)

weblio

なるほど、夕暮れ時だったり、朝日が昇る前の薄明だったりするわけね。それならこの曲でのtwilightはどちらか?

朝日が昇る前のtwilightだ。これは新しい男になったルー・リードがtwilightreeling(釣りのリールのようにぐるぐるひっぱりあげる)している曲なんだ。薄い闇にフックを引っかけて闇を引き剥がす、そんなイメージが浮かぶ。そして次のこんな歌詞。

A new self is born, the other self dead」

新しい自己が生まれ、他のひとりは死ん   

誰が死んだのか?「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」のルー・リードだ。

どうして? 1996年から数年遡ってみよう。1993年のトピック、ヴェルヴェッツ再結成。これはツアーも行い何枚か作品を残すものの再度分裂、そしてメンバーのスターリング・モリソンが死んでしまい伝説のバンドは完全に終わってしまった。

そして1992年のトピック、生涯の伴侶となる前衛ミュージシャン ローリー・アンダーソンとの出会いである。ヨーロッパで出会い、ニューヨークで愛を育み、この『セット・ザ・トワイライト・リーリング』というアルバムが作られた。

アルバム全体に彼女への意思が満ちている気がする。なによりルー・リードのパフォーマンスが若々しい。

伝説は死んだ。そしてインスピレーション溢れる女性と出会い、自分の中の新しい男を発見し、受け入れる。このアルバムの中では一人のニューヨークの男がナチュラルにロックしている。重荷から解放されて楽しそうだ(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代に「ぼく、きみとフーキーウーキー※M-7したいんだ」なんて歌ってくれるわけがない)。ジョン・レノンの『ジョンの魂』みたいなものだね。

ハチャメチャでカオスな明日も知らぬバンド時代もかっこいいけれど、地に足の着いたロックもいいよね、と思うのはぼくが歳を取ったかしらん。

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