ニルヴァーナ 『イン・ユーテロ』 トゥレッツ 歌詞考察

歌詞考察
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メジャーに対する反動心理――ニルヴァーナの快感原則

サブスクリプション全盛の今の時代にフルアルバムを聴く醍醐味は‟トゥレッツ”のような曲を聴くことだ。

断言しよう。もしあなたがApple Music、AmazonMusic、spotifyを利用していたら、きみは‟トゥレッツ”なんか聴かない。

きみは‟スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”を聴いて、あるいは‟ハート・シェイプト・ボックス”を聴いて違うアーティストへ移行する。もう人類はアルバムを頭からケツまで聴くことに耐えられない。

誤解を恐れずに言うならこの‟トゥレッツ”ニルヴァーナのベスト・トラックではない。1分30秒程度のパンクナンバーで、おそらくレコード会社のお偉いさんに「出せるものなら出してみろ」という挑発で収録した曲だと思う。

ぼくは個人的にこの曲が大好きだ。このアルバムが大好きだ。とても絶妙なバランスで成り立っているように感じられるから。

多くのベスト・アルバムはベストな曲が集められていることで美を損なっている。つまり退屈になっている。ニルヴァーナにもベスト・アルバムがあるけれど、あれは‟ユー・ノウ・ユア・ライト”を聴くために存在するアルバムで、それ以上の価値はないと思う。

最良なアルバムはベストな曲だけで成り立っているわけではない。「5」の曲もあれば「2」や「3」の曲もある。この‟トゥレッツ”はあきらかに「5」ではないけれど、『イン・ユーテロ』というアルバムでこのポジションに位置しているから固有の存在感を放っている。

オール5の優等生と、3の平凡な生徒と、できの悪い2の彼と、1の不良が集まってユニークなクラスが成立する。オール5だけのクラスは優秀かもしれないけれど退屈だし、不良だけのクラスは機能しない。多様な個性が集まって面白いクラスができるし、個々の個性に光が当たる……。

Nirvana – Tourette’s (Live at Reading 1992)

ニルヴァーナのメンバー全員が思う存分パンクロックしている。ギターを手にしたばかりのキッズはニルヴァーナをコピーするとき‟スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”ばかりをコピーするけれど、キッズはこっちをやったほうがいいんじゃないかな。‟トゥレッツ”にはエレクトリックギターをかきむしる快感と熱狂があるから(こっちのほうが簡単だし)。

ニルヴァーナが『ネヴァーマインド』で売れすぎていなかったら、この曲は収録されなかったかもしれない。『イン・ユーテロ』時点で、ニルヴァーナがマイナーで、メルヴィンズぐらいの知名度だったら、‟トゥレッツ”は変な話「普通」に感じたかも。ニルヴァーナは、「メジャーはダサい、インディーはまっぴら」という矛盾した気持ちを抱えていたから、「めちゃくちゃ有名でメジャーな俺たちが‟トゥレッツ”を収録したら面白いだろう」と考えたんじゃないかなと思うんだ。

トゥレッツ 和訳

こ✖まん、そーく、べんしょう

ニルヴァーナ 『イン・ユーテロ』”トゥレッツ” 対訳:中川五郎

トゥレット症候群――軽快・増悪を繰り返しながら慢性に経過する

オフィシャルの歌詞カードに掲載されている言葉はこの三つ。「こ✖まん、そーく、べんしょう」

言語だと「Cufk,Tish,Sips

もちろん、正式な(というか実際に歌っている)歌詞はあるんだけれど、カート・コバーンの意向で掲載はこのようになっている。

タイトルの‟トゥレッツ”というのは、トゥレット症候群という神経疾患のことで、自分の意思で言葉がうまく話せなくなる症状のこと。

トゥレット症候群にかかると、無意識にチック(急に出現する運動や音声が、繰り返し、不随意に出現する疾患)を起こしたり、話す言葉をオウム返しにしたり、汚言症という意図せず卑猥な言葉を話したりしてしまう。

カートは、この病気のイメージに触発されて、「自分の意思で言葉がうまく話せない」パンクソングを作った。そして、「俺は病気のパンクロッカーだから綴りが書けない(Cufk,Tish,Sips)」ってことなのかな。それにしてもこの人はホントいろんな病気に精通してるね(ニルヴァーナリスナーは病気に詳しくなる)。

トゥレット症候群について調べようとWikipediaを当たったらこんなことが書いてあった。

トゥレット障害(トゥレットしょうがい、英語: Tourette syndrome)またはトゥレット症候群とは、チックという一群の神経精神疾患のうち、音声や行動の症状を主体とし慢性の経過をたどるものを指す。小児期に発症し、軽快・増悪を繰り返しながら慢性に経過する。

Wikipediaより転載

小児期に発症し、軽快・増悪を繰り返しながら慢性に経過する。

この部分って、なんだかカート・コバーンと音楽についての関係みたいだと思いませんか?

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