ペイヴメント/スランティッド・エンチャンティッド ディスクレビュー

音楽
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ヘタウマは偉い!

ローファイサウンドの原点。1992年リリースのペイヴメントのファースト・アルバム。

ペイヴメントの良さは、一言でいうと「ノンプロ」っぽいところだと思う。

素人っぽいへなちょこなサウンドと、変則チューニングの奇妙なコードの響き、やる気のないメロディ。そしてセンスのあるソングライティング。

湯村輝彦さんというイラストレーターの言葉で、「ヘタウマ」という言葉がある。

「ヘタウマ」ってのは技術は稚拙なんだけど、ぐっとくるような存在感のあるもの。

そのほかにも「ヘタヘタ」、「ウマヘタ」、「ウマウマ」ってのがあって、

「ヘタヘタ」→技術も稚拙で内容も乏しい

「ウマウマ」→技術があって内容がいい

「ウマヘタ」→技術はあるけど響かない

湯村さんがこれに順位付けをすると、1位が「ヘタウマ」、2位が「ヘタヘタ」、3位が「ウマウマ」、4位が「ウマヘタ」となるらしい! けっこう意外だよね。まあ、でもちょっとわかる気もする。

ただ、巧いだけの演奏って、言っちゃなんだけど「で?」って思っちゃうもんなんだよな。説得力のある巧さだったら、なるほど、って思うけど。例えばレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドはオーストラリア室内管弦楽団に依頼されてスコアを書いたりしてるけど、レディオヘッドの良さって演奏の巧さではないよね。レディオヘッドの世界を構築するために必要な技術や要素を取り入れてるわけで。技巧を堪能するために聴いてるわけじゃない。

ペイヴメントの話に戻ると、ロック界の「ヘタウマ」大賞はあなたたちだ! と勝手に表彰したくなる。今の時代にペイヴメントがデビューしてたら、YouTubeやTikTokで配信してたかも。なんていうかペイヴメントって権威的じゃない感じなんだよね。そこらへんの兄ちゃんって感じ。だから、ロックの慣習なんかを毛嫌いしていて、スマッシング・パンプキンズと揉めたりとかね。

当時では私服でカバーの写真を撮ったり、私服のままステージに上がったりってのはかなり珍しかったらしい。今では逆だよね? ロックスターになりたい!とは逆のメンタリティ。

俺はそこまで力強く歌えない

スランティッド・エンチャンティッド収録の6曲目“チューリッヒ・イズ・ステインド”で、スティーブン・マルクマスは

俺はそこまで力強く歌えない

根性がいる、そんなの俺には持てない

ペイヴメント チューリッヒ・イズ・ステインド 対訳:田中美紀

と歌う。

そして7曲目のラリった感じの“チェスリーズ・リトル・リスツ”では

Oh,oh goddamn!

ペイヴメント チェスリーズ・リトル・リスツ 

ヘロヘロなシャウトでgoddamn!(やっちまったよ~)と叫ぶ。

5曲目の“コンディ・フォー・セール”では、何度も「俺は頑張ってる」と叫ぶ。途中、ラップみたいなのも入ってくるんだけど、歌詞は不明。

10曲目の“トゥー・ステイツ”ではへらへらしながら「二つの国が欲しいんだ」と歌い、14曲目の“アワ・シンガー”では

俺は待ってた、わくわくしながら

太陽が昇っても、天は俺の魂を沈めない

夢見たけれどそれは決してやって来ない

それは決してやって来ない

ペイヴメント アワ・シンガー 対訳:田中美紀

と歌う。

ぼくはこの曲がめちゃくちゃ好きだ。不安定で、人を食ったようなスカスカな演奏(傑作のアウトロ!)。この曲と1曲目のサマー・ベイブがハイライトな気がする。

アワ・シンガーは歌詞も良い。OUR SINGER(アワ・シンガー 俺たちのシンガー)は、夢を見るようにわくわくしながら待っていても、決してやってこない

ロックスターを批判していたスティーブン・マルクマスらしい歌詞だ。そしてこれこそがペイヴメントのスタイルなんだ。とにかくプロっぽいのはノー! 自分たちのリアルを貫く。このへんってベックにも通じるものがあると思う。時代の空気ってのはやっぱりあるらしい。どっちも90年代前半で、カリフォルニアだもんね。

ちょっと自分の話をすると、2020年9月現在、ぼくは無職でして……何をしているかというと、こういうブログを書いたり、自分用の文章を書いたり、ギターを弾いたり、読書をしたり、料理を作ったり、野球を観たり、まあ、そういう感じなんだけど、たまにマジでダルい時があって、何もせずにボサっと一日を無益に過ごす日があって、その時の、時間を湯水のように無駄にしてしまった罪悪感がもの凄くて、けっこう堪えるものがあるんだけど、そんな時、ペイヴメントの『スランティッド・エンチャンティッド』を聴くと、精神が保てる。みんなも夏の終わりに、失ってしまった時間を後悔するようならペイヴメントを聴こう!大丈夫になるから!

俺は頑張っている!

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