PJハーヴェイ/オン・ツアー:プリーズ・リーヴ・クワイエットリー レビュー

音楽
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PJハーヴェイ『Uh Huh Her』ツアーは最高だった!

PJハーヴェイの初DVD作品『オン・ツアー:プリーズ・リーヴ・クワイエットリー』は、7枚目のアルバム『ウー・ハー・ハー』のツアーをドキュメントした作品で、ポーリー・ジーン・ハーヴェイ自身の意向が完璧に反映された素晴らしい映像作品だ。

この作品のディレクションは映像作家のマリア・モクナシュ

ポーリーが18歳から一緒にアートワーク関連の仕事を託してきた創作上のパートナーである。レディオヘッドとスタンリー・ダンウッドの関係みたいな感じだね。

この映像作品なんだけど、PJハーヴェイファンなら絶対観たほうがいい。未発表曲が2曲入っている。しかも2曲とも名曲だ( ‟Uh Huh Her”‟EVOL”)。

ツアーメンバーも面白い。

  • ギター:ジョッシュ・クリングホッファー
  • ベース:ディンゴ
  • ドラム:ロブ・エリス

ジョッシュ・クリングホッファーは、その後レッド・ホッド・チリペッパーズのメンバーとして加入、ジョン・フルシアンテとのコラボレーションがあったりと、今では有名なプレイヤーだけど、この時点ではまだマイナーだった(クレジットにはバイシクル・シーフの元ドラマーとある)。

ジョッシュ・クリングホッファーは、ヴィンセント・ギャロ(以前、ポーリーの恋人ではという噂があった)からの推薦で、PJハーヴェイバンドのツアーメンバーに加入することになる。豪華だぜ、LAネットワーク。

ベースのディンゴは、マーク・E・スミス率いるザ・フォールで弾いていたことのあるプレイヤー。見た目がモヒカンでけっこうヤバそうに見えるけど、堅実にプレイしている。

ロブ・エリスは長年ポーリーバンドでドラムを叩いている人。安定感抜群のプレイヤー。

この映像作品の最大の特徴は、ツアーのパフォーマンスを映像日を決めずにランダムに撮影していること。これはポーリーのアイデア。

常々、コンサート映像って退屈極まりないって思ってたの。たいていは一夜限りのステージを複数の固定カメラで撮って編集したもので、ライティングも凡庸。時には演者自身がカメラを意識しすぎてガチガチになってるのもあるでしょ。だから、もし私がライヴ・ドキュメントを作るのであれば、そういうものは避けたかった。そしてそんな私の望みを叶えてくれる唯一の人間がマリアだったの

PJハーヴェイ 『オン・ツアー:プリーズ・リーヴ・クワイエットリー』 対訳:美馬亜貴子

こうして、パッチワークのようにツギハギされた映像作品を観ると、ライヴの張り詰められたエネルギーと、バックステージでのリラックスした軽口や、ちょっとナーヴァスになっている様子などが覗き見られて、自分がツアーバンドのスタッフとして同行しているかのような錯覚を覚える。

楽屋でベースのディンゴがジョッシュに「ダメ人間のジョッシュにはツアーしかない」と断言しているシーンが面白い。笑

タイトル・トラックなのにアルバムでは収録されない‟Uh Huh Her”

この映像作品に収められている曲は以下。

  • ミート・ジ・モンスター 『To Bring You My Love』収録
  • ドレス 『Dry』収録
  • Uh Huh Her 未発表曲
  • トゥト 『Dance Hall at Louse Point』収録
  • ダウン・バイ・ザ・ウォーター 『To Bring You My Love』収録
  • イッツ・ユー 『Uh Huh Her』収録
  • ビッグ・エグジッド 『Stories From The City Stories from The Sea』収録
  • ハーダー 『To Bring You My Love』収録
  • ザ・ダーカー・デイズ・オブ・ミー&ヒム 『Uh Huh Her』収録
  • パーフェクト・デイ・エリース 『 Is This Desire?』収録
  • ヴィクトリー 『Dry』収録
  • キャサリン 『 Is This Desire?』収録
  • フー・ザ・ファック? 『Uh Huh Her』収録
  • EVOL 未発表曲
  • マイ・ビューティフル・リアー 『 Is This Desire?』収録
  • ザ・レター 『Uh Huh Her』収録

『Uh Huh Her』のツアーだから『Uh Huh Her』収録の曲が多めだけど、バランスよく代表曲が並んでいる。

‟ミート・ジ・モンスター”は仁王立ちのポーリーが頼もしい。クレイジーなジョッシュとチンピラのディンゴを飼いならしているかのような圧巻のパフォーマンス。

‟ドレス”代表曲。単音弾きのペラペラギターソロがイケてる。

‟Uh Huh Her”未発表曲。スティック4つのカウントから一気に真っ黒などブルーズへ。鳥肌が立つかっこよさ。

‟トゥト”ヒステリックな疾走感。ちょっと他にはない曲。

‟ダウン・バイ・ザ・ウォーター”ジョッシュがドラムを担当。エリスがシンセを担当している。淡々と情景を構築していく。

‟イッツ・ユー”ナイーヴで壊れそうな演奏。ライヴで聴けて嬉しい。

‟ビッグ・エグジッド”解放感が物凄い。視界が開けていくような素晴らしい曲。演奏している全員が楽しそう。

‟ハーダー”パワフル。濃いエネルギーが充満している。ベストパフォーマンス。

‟ザ・ダーカー・デイズ・オブ・ミー&ヒム”緊張感のあるバラード。

‟パーフェクト・デイ・エリース”ジョッシュがドラムを担当。ポップでありロックな佳曲。お洒落な曲だよね。

‟ヴィクトリー”エリスとジョッシュのダブルドラム。呪術的でエモーショナル。ポーリーのボトルネックが炸裂している。

‟キャサリン”幽玄。セミ・アコースティックな雰囲気で気持ちい。

‟フー・ザ・ファック?”タイトなパンクナンバー。ジョッシュがソリッドにギターを弾きまくっている。かっこいい。

‟EVOL”スローでダルなブルーズ。サビの垢抜けたファルセットが美しい。

‟マイ・ビューティフル・リアー”ジョッシュがドラムを担当。ポーリーがドラム・スティクを1本持ってシンバルを叩きまくる。モダン・ブルーズ。

‟ザ・レター”ソリッドな演奏が見事。ギターとボーカルのコンビネーションがかっこいい。

こうして見てみると、『Rid of Me 』からの曲が入ってないんだね。‟50 Ft Queenie”なんかをこのメンバーで演奏をしているが観てみたかったけど。

個人的にベスト・パフォーマンスは‟ハーダー” そして未発表曲の‟Uh Huh Her(どうしてアルバム『Uh Huh Her』に入っていないんだろう)これらの曲を聴くと、ポーリーのバックグラウンドにはブルーズが強く存在するということがわかる。

カート・コバーンの生涯のお気に入りだったPJハーヴェイ。センセーショナルなデビューから数年が経ち、この作品のインタビューでは多くの自信に溢れた発言をしている。

いつかは自分がプロデュースする作品が作りたかった。今回初めてその立場に立つことができた。と話すポーリー。

『プリーズ・リーヴ・クワイエットリー』はPJハーヴェイの充実期が確認できる希少な映像作品なんだ。

PJハーヴェイ/UH HUH HER ディスク・レビュー
世界は回り続け/蜂は羽音を立て続け/そして私は走り続けるだろう――静かな傑作PJハーヴェイ『UH HUH HER』ディスク・レビュー 私的ライナーノーツ ロック 文学 wagatsuma-songs.com

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