プライマル・スクリーム/ライヴ・イン・ジャパン ディスクレビュー

音楽
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プライマル・スクリーム未聴者は何から聴けばいいのか?

友達に「プライマルってあんまり分かんないんだけど、おすすめある(どれから聴くべき)?」と聞かれたと想定してどのアルバムをすすめればいいか?

  • 1番有名な『スクリーマデリカ』をすすめる 
  • ベストアルバムをすすめる
  • ファーストアルバムから聴けと言う
  • 自分の好きなアルバムを素直にすすめる

まあ、想定するとこんな感じになると思うんだ。どれも選択肢としては良いし、これでプライマル・スクリームを気に入ってくれたらとても嬉しい。

プライマル・スクリームの名盤といえば『スクリーマデリカ』、1991年という空気を体現した傑作だ。だけど、2020年現在では、ハウスもテクノもミクスチャーも当たり前に聴けるようになっているから、おそらく『スクリーマデリカ』を初めて聴いてもそんなに新鮮に映らないんじゃないかな、という懸念がある。

“ムーヴィング・オン・アップ”“ローデッド”を聴いて「なるほどー」と言って、プライマル・スクリームの魅力をわかった気になり「プライマルってハウスとロックのミックスっしょ!オッケー、聴いたわ!」となるとちょっと寂しい(もちろん気に入ってくれたら嬉しい)。

それなら、ベスト盤なら網羅的に聴けるからいいっしょ、となるわけだけど、プライマル・スクリームのベスト盤は現時点で3作品リリースされている。

  • ダーティ・ヒッツ
  • シュート・スピード(モア・ダーティー・ヒッツ)
  • マキシマム・ロックンロール ザ・シングルズ

『ダーティ・ヒッツ』は初のベスト盤。『スクリーマデリカ』以降の曲を中心に『イーヴル・ヒート』までの楽曲でセレクトされている。『シュート・スピード(モア・ダーティー・ヒッツ)』は、日本限定の企画盤で、ファン投票で選ばれた曲がセレクト。『ダーティ・ヒッツ』に漏れた初期の曲なんかも入っているのが特徴で、『ダーティ・ヒッツ』になんであの曲が入ってないんだー! というファンのために作られた裏ベスト的なアルバム。

『マキシマム・ロックンロール ザ・シングルズ』、これは2019年に出た最新のベスト盤。1987年のデビューアルバム『ソニック・フラワー・グルーヴ』から2016年の『カオスモシス』までの全11枚のオリジナルアルバムからの30曲に、NMEのコンピレーション・カセット『C86』(1986年)に収録されていた「ヴェロシティ・ガール」を加えた合計31曲が入っている。

ベスト盤、いいよね。『ダーティ・ヒッツ』が発売された時、プライマルがベスト盤を出すなんて意外な気がしたけど、ボビー・ギレスピーが「偉大なロックンロールバンドはベスト盤を出すものなんだ」と発言していて、なるほど、わかりました! と言ってタワーレコードで買いに行った思い出がある。

だけど、初めて聴くプライマル・スクリームのアルバムとしてベスト盤はちょっとなーという気もする。なぜか? ベストアルバムは長い。サブスク時代のご時世に30曲ぐらいのボリュームの2枚組のアルバムをいきなりおすすめしてもちょっとしんどい気がする。『シュート・スピード(モア・ダーティー・ヒッツ)』は、2枚組ではないけど、位置付けとしては、『ダーティ・ヒッツ』の裏版で、コアなファンが喜ぶセレクトになっているから、いきなりはちょっとなぁ、と思うし。この中でおすすめするなら、『マキシマム・ロックンロール ザ・シングルズ』マジで網羅的になっているし、プライマル・スクリームの歴史が見える。

ただ、歴史が見えるのはいいけど、初めて聴く人が知りたいのはバンドの歴史じゃなくて、単純にいい曲が聴きたいだけな気もする。

たいていの人は、いい曲を聴く→バンドのメンバーについて知りたくなる→バンドの歴史について知りたくなる、の順番だから。多分。

似たような理由で、ファーストから聴くといいよ!と言っても、ネオアコ感の強いファーストをすすめるのもなんかなあ、と思ってしまう。個人的にはね。それに、ボビー・ギレスピー自身もなんかファーストに対する思い入れが薄そうだし……。

自分の好きなアルバムを素直にすすめる

結局これが、1番いいのかなー。

もし、あなたが『スクリーマデリカ』が好きだったら、熱意を持って情熱的に語ればいい。もし、あなたが『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギブ・アップ』が好きなら、メンフィスの情景や憧れも添えて情熱的に語ればいい。

ぼくはオリジナル・アルバムでは『エクスターミネーター』と『イーヴル・ヒート』が好きだ。だから、その2枚をすすめたいんだけど、代表曲と言ったら『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギブ・アップ』に入っている”ロックス”だし、歴史的に見たら『スクリーマデリカ』は外せないだろう。一撃でプライマルの魅力とバンドの凄さを感じてもらうには……

ここから、情熱的に語ります!!!!!(ビックリマーク多め)

まずは『ライヴ・イン・ジャパン』を聴け!!!!!!!!!

2002年のプライマル・スクリームはドリーム・チームだ

前置きが長くなったけど、プライマル・スクリームでぼくがおすすめしたいアルバムは『ライヴ・イン・ジャパン』だ。

このアルバムは、2002年の来日時にZEEP TOKYOで行われたライヴをまとめたもの。

収録曲は

  • 01. Accelerator エクスターミネーター収録
  • 02. Miss Lucifer イーヴル・ヒート収録
  • 03. Rise イーヴル・ヒート収録
  • 04. Shoot Speed / Kill Light エクスターミネーター収録
  • 05. Pills エクスターミネーター収録
  • 06. Autobahn 66 イーヴル・ヒート収録
  • 07. City イーヴル・ヒート収録
  • 08. Rocks ギヴ・アウト・バット・ドント・ギブ・アップ収録
  • 09. Kowalski バニシング・ポイント収録
  • 10. Swastika Eyes エクスターミネーター収録
  • 11. Skull X イーヴル・ヒート収録
  • 12. Higher Than the Sun スクリーマデリカ収録
  • 13. Jailbird ギヴ・アウト・バット・ドント・ギブ・アップ収録
  • 14. Movin’ on Up スクリーマデリカ収録
  • 15. Medication バニシング・ポイント収録
  • 16. Born to Lose ジョニー・サンダースカバー

『イーヴル・ヒート』リリース後のツアーなので、『イーヴル・ヒート』の楽曲が多くなっているが、『スクリーマデリカ』『ギブアウト~』からの曲もきっちり入っているのが嬉しい。”ロックス”も”ムーヴィング・オン・アップ”も入ってるよ!

『エクスターミネーター』、『バニシング・ポイント』収録の凶悪な曲たちもこれらの楽曲と違和感なく共存している!

そして、何が凄いって、メンバーが凄い!

  • ボビー・ギレスピー
  • アンドリュー・イネス
  • ロバート・ヤング
  • マーティン・ダフィ

というプライマル・スクリームチームに加えて、

ベースに元ストーン・ローゼスのマニ、そしてギターにマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズという陣容でライヴを行っている。

UKロックの歴史を築いたスーパーチームだぜ……!

そして破格なのは音! 爆音、爆音、爆音!!!

ボビーの「グディーブニーヤ(グッド・イヴニング)」というジョニー・ロットン風のアクセントの掛け声から”アクセラレーター”に突入。ベースの音圧が凄い。そして、ノイジーなファズギターとドライブするグルーヴ。”ミス・ルシファー”なんてカウント4つでいきなり爆音。そしてサビでさらに音圧が上がるっていう。。原曲のデジタルな感じは皆無。ひたすら16ビートで爆音。”アウトバーン66″はサイケ感が強めなのにベースがゴリゴリ。

個人的には9“コワルスキー”~10“スワスティカ・アイズ”~11“スカルX”の流れが極悪。『バニシング・ポイント』→『エクスターミネーター』→『イーヴル・ヒート』という流れなのも美しい。

そして最終曲は、ジョニー・サンダースの”ボーン・トゥ・ルーズ”!!!!!

ロックを知り尽くしたプライマル・スクリームの最強アルバムだ。中だるみは一切なし、容赦もなし!

だめだ。プライマルについて語る時は極端に語彙が貧弱になってしまう……。

このアルバムを聴く際におすすめのシュチエーションをお伝えすると、クソみたいな労働に行く前と、クソみたいな労働が終わった後。

労働に行きたくない憂鬱さを殺意にまで昇華してくれるし、労働後は喜びは狂気にまで膨らむアルバム。

最後にボビー・ギレスピーの言葉を。

核心に触れよう。

日本の人々はロックンロールを愛し、ロックンロールのために生きる。

このCDは三夜にわたって収録された

LIVE AT ZEPP TOKYO、2002年11月。

東京はエネルギーに満ち溢れた街、

プライマル・スクリームはエネルギーに満ち溢れたバンド、

共に屋根をぶっ飛ばしてやった、

おまえも(そこに)いたらよかったのにな。

ロックンロール万歳!!

ボビー・ギレスピー ライナーノーツより転載

共に屋根をぶっ飛ばしてやった……!

もう、なにも言うことはない。

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