プライマル・スクリーム 『ライオット・シティ・ブルース』 ニッティ・グリッティ 歌詞考察

歌詞考察
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核心に入ろう

『ライオット・シティ・ブルース』のオープニングで、ライオット・シティの憂鬱に取り憑かれても乗り越えるんだ、というメッセージを歌ったプライマル・スクリーム。次の曲“ニッティ・グリッティ”ではどんなことを歌っているんだろうか?

曲調はローリング・ストーンズテイストのロックンロール。けっこう古い「ノリ」なんだけど、かっこいい。

ボビー・ギレスピーはパンクでもありロックという性格を持っていて、今のキッズには理解できない話かもしれないけれど、パンクが生まれたときの仮想敵は従来のロックだった。商業的だったり、大きいものに対するアンチの精神をパンクは持っていたから、ストーンズなんかはけっこうやり玉にあがっていた。

ボビーは1962年生まれ、イギリスでパンクが花開くのが1977年。ボビー少年は15歳。爆発的なムーブメントだったパンクの精神性にどっぷり浸ったはずで、本当なら(というか)ストーンズのようなオールド・スクールのロックは敵だったはず。だけど、ボビーはセックス・ピストルズへの愛とローリング・ストーンズへの愛をいろんな媒体で公言している。

別に普通じゃん? と思うかもしれないけれど、「プライマルは移り気なカメレオンだ」とか言われ批判されてたこともあるぐらいで、当時は「軽薄」と見えてしまうような態度だったのかもしれない。今は、サブスクリプションでどの時代の音楽も並列に聴けるから、よっぽどの原理主義者的な人は置いといて、どの時代、どのジャンルの音楽も楽しめる。別にピストルズと、グリーン・デイと、ONE OK ROCKが同時に好きでもなんらおかしいことはない。ハッピーである。

ボビーはこのへんのバランス感覚がピカイチで、才能といってもいいと思う。センスというか嗅覚というか。だけど根本は音楽性よりもアティチュードの人なんだろうな。音楽スタイル(ジャンル)よりも精神性を重んじる。

でも、やろうと思えば時代のエッセンスも取り込んで革新的な音楽を創っちゃうしね、本当に凄い。

『ライオット・シティ・ブルース』に関しては、かなりアティチュード寄りのアルバムなんだと思う。

さて、核心に入ろう(Let’s get down to the nitty-gritty

ニッティ・グリッティ 和訳

腹を空かせた迷い犬

ゴミ箱から肉を盗み出してる

望みのものが手に入らなくたって

頂けるものは頂くのさ

街の通りは

いけすかないヤツらでいっぱい

オレは膝までクズに埋もれてる

弾丸を詰めた銃を持って

十字架に掛けられたキリストみたいな気分

さあハニー 馬みたいに蹴飛ばしてやるぜ

犬みたいに嚙みつけよ

さあシュガー 血が出るまで引っ搔いてくれ

ストップしたりしないで

ガール オレたち行動を起こさなきゃ

ガール 行動を起こさなきゃ

オレたち 核心に入らなきゃ

ほんとの核心に入るんだ

ヒップシェイカー

ハートブレイカー

腰の抜けるような美人

ヴードゥーの女占い師

おまえは一級品を持ってる

その甘いミゾを堀り堀りしてやるよ

罪を犯して

刑期を務めるのさ

第一級殺人

おまえの呪いを掛けてくれ

地獄を見せてくれ

さあひざまずくんだ

さあ始めよう

生き方を説教するつもりなら

毎日説教してるとおりに生きなきゃダメだ

魂を売っちゃいけないよ ハニー

そいつを人手に渡しちゃダメだ

飛行機を墜落させろ

おかしくなっちまえ

宮殿を焼き落とせ

ダイスを転がせ

命を賭けろ

オレはまた息を吹き返してやるからな

さあハニー 馬みたいに蹴飛ばしてやるよ

犬みたいに噛みついてやる

さあシュガー アザだらけのおまえにキスしてやる

ストップなんかするもんか

さあ始めよう

ガール オレたち行動を起こさなきゃ

プライマル・スクリーム 『ライオット・シティ・ブルース』 ニッティ・グリッティ 訳:沼崎 敦子

十字架に掛けられたキリストみたいな気分

ぱっと見、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを思わせる歌詞だ。ストリートの猥雑さや、ろくでもないやつが出てくるあたりが。

魂を売っちゃいけないよ ハニ

そいつを人手に渡しちゃダメだ

このへんの歌詞は本当にヴェルヴェッツっぽい。

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ヴェルヴェッツとの違いは、ルー・リードの視点はかなりリアルで、状況を描くことに徹しているのに対して、ボビーの歌詞はヒロイックだ。それはボビーが未だにロックに対して憧れのような視点を持っているからだと思う。

おまえの呪いを掛けてくれ

地獄を見せてくれ

「おまえ」はロックに置き換えられそうだ。ロックの呪い、ロックの地獄。

飛行機を墜落させろ

おかしくなっちまえ

宮殿を焼き落とせ

ダイスを転がせ

命を賭けろ

このあたりの誇大妄想的なやけっぱちの過激さは幻覚的で、極めてロックだ。ダイスを転がせというラインなんかストーンズに対するオマージュを思わせるよね。

十字架に掛けられたキリストみたいな気分

オレはまた息を吹き返してやるからな

この部分がこの曲の最大のキモかな。ボビーのロック哲学が垣間見えるフレーズだ。

おそらくロックは理不尽で、呪いで、地獄。だけど何度でも再生するもの。

歌詞は邪悪だけど曲調はゴキゲン。最高である。

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