プライマル・スクリーム/スクリーマデリカ ディスクレビュー

音楽
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“1991年”ロック・フリークスたちが作った歴史的名盤

プライマル・スクリームをスターダムにのし上げた歴史的名盤『スクリーマデリカ』

1991年という年はロックにとって物凄いインパクトのある年だった。

ニルヴァーナがメガヒットを飛ばしたり、マイ・ブラッティ・ヴァレンタインが『ラブレス』をリリースしたり、レッド・ホット・チリペッパーズが『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』をリリースし、ダイナソーJRのメジャーデビュー作があり、スマッシング・パンプキンズとパール・ジャムのデビューも確かこの年だ。

さて、この『スクリーマデリカ』ってどんなアルバムなの? と訊かれたらなんて答えよう。ハウスミュージックとロックの融合? セカンド・サマー・オブ・ラヴの結晶? ドラッグ(レイヴカルチャー)がもたらす陶酔と万能感を音楽で表現したサイケデリックアルバム?

どれもそうなんだろうけど、このアルバムは「ロックへの愛、音楽への愛」それに尽きるアルバムだとぼくは言いたい! 当時、流行っていたアシッドハウスや、レイヴカルチャーと結びつけて考えがちなアルバムだけど、この『スクリーマデリカ』って実は流行を追っていない音楽だと思うんだ。だって、このアルバムの元ネタってリリースされた当時ですら古いんだもの!

M-3.“Don’t Fight It, Feel It”

元ネタ(というか)はMC5の謎の言葉「ラマラマファファファ」の引用。MC5は、1960年半ばから1970年前半ぐらいまで活動してたデトロイトのロックバンド。イギーポップに並ぶパンクの始祖的存在。伝説的ガレージロックバンドへのリスペクト+ゴスペル+ハウス

M-2.“Slip Inside This House”

1960年代のテキサスのサイケデリック・ロックバンド13thフロア・エレヴェイターズのカバー。歌い出しのサイケ感がめちゃくちゃクール。ぼくはこのアルバムで一番好き。一番好きな曲がカバーってアレだけど、案外最近のライブでも演ってるからいいでしょ。

この曲ってタイトルはSlip Inside This Houseなのに歌っているのはtrip Inside This Houseなのね。

 M-1.“Movin’ on Up”

『スクリーマデリカ』のオープニングナンバー。

これはあれですね。ローリング・ストーンズの”悪魔を憐れむ歌”への愛がまぶしいですね。ボビー・ギレスピーのゴールドのシャツもまぶしいです。

M-7.“Loaded”

ギターの”ジャ~~ン!ジャンッ!”がかっこいい。そしてボビーの「アーイエー♪」が痺れるダブナンバー。元ネタは自分たちのガレージロックテイストの強い2ndアルバム『プライマル・スクリーム』の”I’m Losing More Than I’ll Ever Have”

古き良き時代を思わせるロックナンバーがこんな感じになるんだ。

M-6.“Come Together”

ゴスペル+サイケデリックロック。

スピリチュアライズドなんかもゴスペルを取り入れたりするけど、ドラッギーなバンドは罪の意識が強いからなのかな。時々、神よ! 俺を見捨てないでくれ! というモードになるらしい。この曲は単純にハッピーなヴァイブが溢れているね。

M-4.Higher Than the Sun

この曲って今聴いてもめっちゃ新しい気がする。

なんとも形容しがたい音楽だよね。ボビー曰く”スペース・エイジ・レゲエ”ということになるらしい。なるほど……。

浮遊感と陶酔感とボビーのヘロヘロボーカル。「僕は太陽よりも高くにいる」と歌っている。踊れないダンスナンバーでもあり、ロックバラードでもないこの曲を作るあたりプライマル・スクリームらしくて好きだ。

スクリーマデリック・ミュージック

このアルバムのサウンドを一言で言うなら”スクリーマデリック・ミュージック”ということになるらしい。もっと言うなら、

オレ達のベースにあるのは、30~40年代のゴスペル、50~60年代のソウル、それからカーティス・メイフィールドやインプレッションズあたりとか。カントリー&ウェスタンでは、ハンク・ウィリアムスあたり、ブルースでは、ハウリン・ウルフ、ジョン・リー・フッカー、ロバート・ジョンスンあたり、マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンなんかのジャズにも影響を受けている

remix#9 ボビー・ギレスピー

それから91年の来日時のライブ前のリハーサルで演奏した曲は、

ビートルズ、ローリング・ストーンズ、フェイセズ、T-レックス、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、MC5……。スクリーマデリカの曲やりなよ。

こういう人たちが当時の最先端の『スクリーマデリカ』を作ってしまうんだから驚きだよね。

当時、ロックファンからは「節操がない」とか「流行りに乗った」とかバッシングも受けたみたいだけど、ロックの本質ってすべてを飲み込む雑食性だと思うし、スタイルに固執してダサくなっちゃうよりはずっといいと思うけど。

それに、ボビー・ギレスピーが狡猾なサバイバーだったとしても、作ってる音楽やベースになっているものは過去の音楽への憧れと愛だと思うんだ。

(スクリーマデリカを振り返って)当時の重要なポイントは実験していくことだった。失敗するか、成功するか、いつだってわからないんだ。僕らは成功することに対して期待はもたない

remix#35 ボビー・ギレスピー

『スクリーマデリカ』はコンセプチュアルアルバムじゃない、行き当たりばったりで作った、とも語るボビーだけど、根底に流れるロックへの愛があるから何をするのも自由になっている。上辺だけの流行を追うと一瞬で忘れ去られるけれど、このアルバムは今も憧れの名盤として輝いている。

ラマラマファファファ……!(誰か意味を教えてください)

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