時代と逆行 ブギー・ナンバー
“ザ・ナイティナインス・フロア”に続く曲は、ブルージーなブギー・ナンバー“ウィア・ゴナ・ブギー”
プライマル・スクリームのゴキゲンなモードが反映された曲だ。
歌詞はタイトルの通りというか、かなりやっつけ、というかロックの常套句が満載というか、プレスリー時代を思わせるフィールというか、まあ2006年ぽくはない。こういった時代と逆行した曲を取り上げるのもこのアルバムの魅力なんだと思う。
だけど、不思議とこの曲はクセになる。ぼくはかなり好きである。若い人が聴いても新鮮なんじゃないかな。
ウィア・ゴナ・ブギー 和訳
いけない子だ
いけない子だ
おまえの髑髏が微笑むのを見るためなら
1000マイルでも這っていくよ
オレがほしいのはおまえ
オレがほしいのはおまえ
原子爆弾
黄金に輝く夜明け
オレがほしいのはおまえ
オレはゴミ収集人
オレはゴミ収集人
おまえのゴミ箱に指を突っ込んで頂くのさ
オレはゴミ収集人
おまえのドブさらいをしてやるよ
おまえのドブさらいをしてやるよ
オレの魔女になっていいぜ
おまえのエクソシストになってやる
おまえのドブさらいをしてやるよ
行かなくちゃ
行かなくちゃ
フォード・ムスタングを盗んで
あちこち乗り回すんだ
行かなくちゃ
オレたち 大いに楽しむのさ
オレたち 大いに楽しむのさ
オレたち 大いに楽しむのさ
一晩中
一晩中
プライマル・スクリーム 『ライオット・シティ・ブルース』 ウィア・ゴナ・ブギー 訳:沼崎 敦子
黄金に輝く夜明け
この曲の歌詞はたわいもない、というか深刻なことはなにもない。
ドラッグも、血生臭い暴力もここにはない。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに“サンデー・モーニング”という、大いに騒いだ翌日の陰鬱さを描写した名曲があるけれど、その前日譚を描写したような世界が“ウィア・ゴナ・ブギー”には描かれている。
景気良く酔っ払って、ホラを吐く。突飛なことを言う。
おまえの髑髏が微笑むのを見るためなら
1000マイルでも這っていくよ
オレがほしいのはおまえ
オレの魔女になっていいぜ
おまえのエクソシストになってやる
オレのディーバ、もしくは宿命の女になっていいぜ、と言わず「魔女になっていいぜ」というあたりがボビー・ギレスピーっぽいな、とは思う。ロック=呪い(どうしようもないもの)というヒロイックな態度がこのアルバムの姿勢だからだろうな。
フォード・ムスタングを盗んで
あちこち乗り回すんだ
このアルバムは「ライオット・シティ」という架空の荒廃した都市をテーマにしているわけだけど、「フォード・ムスタング」が出てくるあたり、ゆるく南部と結びついているのがわかる。
この曲は韻を踏んでる箇所が多く、ローリング・ストーンズの名盤も歌詞に登場する。
Stickey fingers in your trashcan おまえのゴミ箱に指を突っ込んで頂くのさ
I’m the garbage man オレはゴミ収集人
こういう仕掛けというか、歌詞が出てくるとロックファンは嬉しいよね。
「オレたち 大いに楽しむのさ」というヴァイブが反映されている。
この曲の登場人物たちは「黄金に輝く夜明け」を期待して、一晩中大いに楽しんでいるけれど、おそらくはそうはならないだろう(ライオット・シティ・ブルースの世界観をここまで見てくるとね)。
夜は一瞬だ。楽しい時間は一瞬だ。だけど今夜だけは大いに騒ごう。黄金に輝く夜明けを期待して。
コメント