ソニック・ユース/カレン・リヴィジテッド 歌詞考察

歌詞考察
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ニューヨーク3部作 第2弾は「9.11」直後に奏でられる

美しい曲だ。

ソニック・ユースで唯一歌の上手い(?)リー・ラナルドが歌うノイジーなポップソング。

音響の魔術師ジム・オルークが正式に加入して作られた『ムーレイ・ストリート』収録の素敵な曲だ。

時代はちょうど、「9.11」直後。

ソニック・ユースがマンハッタンに所有するスタジオ「エコー・キャニオン」も立ち入り禁止区域になri,

レコーディングが中止になるというトラブルが起きた。

ソニック・ユースは「カレン」というキーワードを使った曲をいくつか作っていて、

『GOO』収録のテュニック (ソング・フォー・カレン)Tunic (Song for Karen) 

『ア・サウザンド・リーヴズ』収録のカレン・コルトレーン Karen Koltrane

そしてこの『ムーレイ・ストリート』収録のカレン・リヴィジテッド  Karen Revisited だ。

「テュニック」は、はっきりとカーペンターズのカレン・カーペンターに捧げられている(そういえばスーパースターもカバーもしているよね)。

そして、この「カレン・リヴィジテッド」もおそらくはその系譜の曲だと思う。

カーペンターズ……「スーパースター」、「イエスタデイ・ワンス・モア」、「トップ・オブ・ザ・ワールド」、等のヒット曲で知られる、兄妹のポップデュオ。純朴で無垢な音楽を作り、驚異の大ヒット曲を次々に生み出して1970年代を駆け抜けた兄妹デュオでポップス界のスーパースター。

ポップ界のスターになったカーペンターズだけど、光の裏には闇がある。それがショー・ビジネスの世界だ。

カレンは強迫観念のような拒食症と、最大で200回にも及んだツアーによる疲弊や、カレンを支配する大人たちに囲まれてボロボロになり、心不全で32歳の若さで亡くなる。

ソニック・ユースは、カーペンターズの兄リチャードには否定的で、カレンには同情的だ。(特にキム・ゴードンは批判的)

Sonic Youth Karen Revisited

カレン・リヴィジテッド 和訳

このまえ、きみの名前を耳にした

ずいぶん久し振りだった

昔話だと、言う人もいるだろう

人の気持ちは変わるって

きみは思い出の臭い

電光の騎士に触れたよう

彼女はニセの薬をのんで/彼女は天気予報士を演じ

彼女は叫ぶ、宗教なんて救う以上に殺すじゃない

金銀細工に色を塗り/彼女はアシッドクィーンだった

彼女が言うには社会など、熱病みたいな夢に過ぎない

今きみは、木々と塩辛い海に包まれて暮らし

青空の中、トリップしてる

あらゆるものに門戸を閉ざし

ハイになるのに忙しい

僕はといえば、また別の夢の理論で

きみの瞳に我を忘れてる

歴史の本には出てこない/正気は失くし、見た目は保ち

電波の幕のその下で/ガソリンみたいに彼女は火を放つ

山ほどの快楽に身を委ね/癖になるやつを探してる

あの時は知る由もなかった/彼女に会えなくなるなんて

スリルにぞっこん

赤い唇、名うての手腕

相も変わらぬ流し目

こじんまりしたダンサーの国

僕らがキスしたら/時間が横滑り

神経張り詰め/唇噛み締め

家に帰ろう/たまにはね

聞いてみな/僕が大切に思っていいるかどうか

カレンのことを

うまくいかないコミュニケーション

カレン

隔離されて身動きできず

カレン

カレン

Sonic Youth Karen Revisited 対訳:染谷 和美

さすがジム・オルーク! ガチャガチャした音を上手く処理している。そしてリー・ラナルドの歌が凄くいい……! 伸びやかでパワフルだ。

歌自体は3分で終わり、残りの9分間にアウトロを設けているところもこの曲を特別なものにしている。

開放的な曲が終わり、アウトロのドローンがレクイエムを奏でているように感じる。

うまくいかないコミュニケーション

彼女はニセの薬をのんで/彼女は天気予報士を演じ

彼女は叫ぶ、宗教なんて救う以上に殺すじゃない

彼女が言うには社会など、熱病みたいな夢に過ぎない

リー・ラナルドは「彼女(カレン?)」の目を借りて「この世界の欺瞞について」歌う。

宗教は救う以上に殺し、社会は夢に過ぎない、と。

今きみは、木々と塩辛い海に包まれて暮らし

青空の中、トリップしてる

あらゆるものに門戸を閉ざし

ハイになるのに忙しい

「きみ」は海と青空にいて不安もない世界(死後の世界?)にいる。

僕はといえば、また別の夢の理論で

きみの瞳に我を忘れてる

ソニック・ユースには珍しいピュアな表現がここで現れる。あえてイノセントなワードを使うことでその後の崩壊の過程に差を与えているのかもしれない。

歴史の本には出てこない/正気は失くし、見た目は保ち

電波の幕のその下で/ガソリンみたいに彼女は火を放つ

山ほどの快楽に身を委ね/癖になるやつを探してる

「正気は失くし、見た目は保ち」の一節は、まさにカレン・カーペンターの身に起こったことのように感じられる。そして、正気を失っていく様が描かれる。

うまくいかないコミュニケーション

カレン

隔離されて身動きできず

カレン

カレン

そして、カレンは失われていく。隔離されて身動き取れず、うまくいかないコミュニケーションによって。

冒頭の歌詞はどんなだったか?

このまえ、きみの名前を耳にした

ずいぶん久し振りだった

昔話だと、言う人もいるだろう

起こったことはすでに過去になり、もう覚えている人も少ない。すべては忘れ去られていく。「9.11」直後ということも相まって、印象を強くしている楽曲でもあると思う。

ソニック・ユースは、ノイズとオルタナティブ・ロックという文脈で語られることが多いバンドだけど、「9.11」以降、イマジネーションを折り重ねたような楽曲が目立つようになってくる。そして、社会の不安感や、政治の不信感についても語っていくようになる。

音速の少年たちが、ラディカル・アダルツになっていく過程が見える『ムーレイ・ストリート』その中でもキーになる一曲、それがこの”カレン・リヴィジテッド”なんだ。音楽は過去になっても何度でも「再訪」することができる。夢の理論で言えば!

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