ソニック・ユース/フリー・シティ・ライムス 歌詞考察

歌詞考察
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『NYC Ghosts & Flowers(ニューヨーク・シティ ゴースツ&フラワーズ)』収録のオープニングナンバー

In a free lane  フリーレーンで

Ghosts passing time 待ちぼうけしている亡霊たち

Heat rises  熱気が上昇して

Lights thru the town 街を通り抜ける光

Blown soundscapes ぶっ飛ばされたサウンドスケープ

Blue city eyes  青い街の瞳

Black lightning  黒い稲妻

New angel flies  新しい天使が飛び立つ

Make a free line To the northern sky 北の空に向かって自由な線を引くんだ

Holy rain falls  聖なる雨が降り

Ghosts burn to shine  亡霊たちは燃えて輝く

Elevator  エレベーター

Reach for the lights 光に手を伸ばすんだ

Intuition  直感

Free city rhymes 自由な街の詩

NYC ゴースツ&フラワーズ DGC sonicyouth

ピッチフォーク 0.0点の問題作⁉

2000年リリースのこのアルバムはアメリカのメディア『ピッチフォーク』で0.0点という素晴らしいスコアを叩き出した伝説的なアルバムだ。

リリース時、ぼくは17歳だった。

レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『カリフォルニケイション』も同年リリース(気になってこのアルバムのピッチフォークのスコアを見たら6.8点だった)で、この2枚を街のレコード屋で買ってアパートで聴いた。

どっちもピンと来なかった。

どちらかというとチリペッパーズのほうが「わかる」と思い、ソニック・ユースは「マジでわかんね」というレベルで(良さが)わからなかった。

ニルヴァーナとツアーしてた時はアグレッシブでかっこよかったのに、と思った。とにかく「わからない」というのが嫌で(お金ももったいないし)半年間毎日聴いた。そして「なるほど」とつぶやいて棚に閉まった……

今は? と訊かれたら「めっちゃわかる、しみじみわかる」と即答します。はい。

とにかくサウンドが気持ちいし、ドラムパターンだけでも何回聴いても飽きない。サーストン・ムーアのボーカルも安定しているし、アウトロの轟音も痺れる。最初の印象は穏やかな曲だと思っていたけど、これはかなり激しい曲だと思う。

ぼくは一度このギターが弾いてみてくて、チューニングを真似したことがある。6弦からCGDGBBだ。このチューニングにすると開放弦を弾くだけで気持ちいい。この曲のイメージ通り都市を天使が舞い立っていくようだ。

そう、この曲はニューヨークへのラブレターでもありレクイエムでもあるんだ。サーストンにとって亡霊も天使も同列なんだ。フリーレーンで待ちぼうけているのが天使でも構わないし、燃えて輝くのが天使でもいい。

機材の全てを失ったソニック・ユースには大文字のテーマが必要だった。インディーロックとか、パンクとか、オルタナティブとか、グランジなんかの枠を越えた新たな指針となるテーマがね。

それがこのアルバムから「ニューヨーク3部作」へと続いていく。

熱気が「上昇」して、天使は「飛び立つ」、北の「空」に線を引く、「エレベーター」、そして光に「手を伸ばす」これはソニック・ユース版『スターティング・オーバー』でもあるんだ。自分たちの再出発をここから始めようという意思が歌詞に現れている。ジム・オルーク関連のことが語られがちなアルバムだけど、歌詞の視点からバンドの意思を感じていくのも面白いよね。

このアルバムと次作の『ムーレイ・ストリート』のリリースの間に『9.11』が起こることになる。混迷するアメリカ、ブッシュとイラク戦争、このあたりからサーストンの歌詞に政治色が出てくるんだけど、それはまたいつか。

今夜は朝焼けのように鮮やかで強烈なこの曲を聴いてワインでも飲もう。

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