ザ・ドラムス/ハート・バーゼル 歌詞考察

歌詞考察
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ザ・ドラムス、悲しみのポップを鳴らす

ザ・ドラムスといえば2009年に彗星のようにニューヨークで登場して、「レッツ・ゴー・サーフィン」旋風を巻き起こし、Dior Hommeの元デザイナー、エディ・スリマンが溺愛しアーティスト写真を自ら撮影したり、と華やかなバンドの印象を持っている人が多いと思うんだけど、実はかなりハードで悲しい体験をしているバンドでもあるんだ。

ザ・ドラムス結成当時のメンバーは4人

  • Vo ジョナサン・ピアース
  • Gt ジェイコブ・グラハム
  • Gt アダム・ケスラー
  • Dr コナー・ハンウィック

ボーカルのジョナサンと、ジェイコムは幼馴染。ザ・ドラムスのスタートはこの二人で始められる。

お互いに別のバンドに在籍していたんだけど、ジョナサンのやっていたバンドがメジャーデビュー直前にポシャって、この世のどん底だと感じていた時に、ジェイコムがジョナサンを誘ってザ・ドラムスが結成される。そして、二人でどんどん夢のような曲を作っていって、〈MySpace〉に音源をアップしたところ反響があり、イギリスのレーベルと契約。アダム・ケスラーとコナー・ハンウィックも加わり初ライヴを行う。ルックスも良いし、音楽も最高だったから、音楽誌でもバンバン特集を組まれる。

順風満帆である。ところが……

ファースト・アルバムリリース後、アダム脱退!!

メンバー3人とサポートメンバーを加えて、決意新たに頑張っていこう!

そしてセカンド・アルバム『プレタメント』をリリース。

このアルバムは傑作で、ファーストの時の楽観的な夏っぽさは消え、シリアスなトーンの曲が増え、秋っぽい空気感を纏ったアルバムだ。アーティストとして一段階レベルが上がったザ・ドラムスだが

コナー・ハンウィック脱退!!

メンバーは結局、発起人の二人になってしまう。だけど、ザ・ドラムスの核はこの二人だし、大丈夫だろう。そしてサード・アルバム『エンサイクロペディア』をリリース。

このアルバムが暗いんすよ……。季節でいったら冬って感じのダークなアルバム。いいアルバムなんだけど、喪失感がありありと見て取れる感じ。

そして、親友のジェイコブ・グラハム脱退!!

え……? マジ、、もうボーカルのジョナサン・ピアースしか残ってないじゃん。そうなんです。4枚目のアルバム『アビスマル・ソウツ』は、ジョナサンソロなんです。しかも、ジェイコムが脱退する前に、恋人と結婚していたのにそれも破局(ジョナサンはゲイなんだけどアメリカで同性婚が認められるようになって、それまでゲイであることは非公表だったんだけど公にした)。

でも、確かにこの『エンサイクロペディア』のツアーを比寿のリキッドルームで観たんだけど、ジェイコムが全然楽しそうじゃなかったもんな。。演奏は良かったんだけど全体的に暗かった気がする。オープニング・アクトのYkiki Beatのほうがよっぽどレッツゴーサーフィンなヤングな演奏してた気がする。

バンドの最後のピースにも、恋人にも去られて失意のどん底でリリースしいたのが、『アビスマル・ソウツ』、ポップで鮮やかで深みがあって何度聴いても聴き飽きない傑作アルバムの誕生である。

その中でも、この“ハート・バーゼル”が美しい。躍動感のある曲に悲惨な歌詞を乗せる最高のポップ・ソングだ。

The Drums – “Heart Basel”  
ANTI- Records

ハート・バーゼル 和訳

Oh I feel the ocean in my head

僕の頭の中に広がる海


Oh the pressures rising

プレッシャーが増し


And my heartbeat’s speedin

心臓の鼓動は加速する


And can u feel the tension

この緊張状態に君は気づいているの


Crawling up your chest

君の胸の上を這っていく


Oh it’s do or die

やるかやられるか

kid like it’s always been

いつもそんな風に子供じみている

Please call me and tell me that you want me

僕を求めてるって呼び出して伝えて欲しい


Cuz right now my life is getting pretty ugly.

今の僕の人生は目障りでしかない


And I want to share a cigarette and I want to go dancing in the rain.

雨の中でダンスをしたりタバコを一緒に吸ったりしたい

So call me and tell me that you want me and let’s do it all again.

僕を呼びだして、また僕と一緒にやり直そうよ

Oh the tropical weather , it must have softened your heart.

この熱帯気候の中だったら君の心も優しくなる

But now we’re back in California where the air is dry

空気が乾いたカリフォルニアに戻った僕たち

and your heart is closing up in plain sight.

君の心は分かりやすいくらいクローズしてしまっている

And I question your love for me

僕への気持ちを問いたい


You tell me to have confidence

自身を持てって君は言うけれど


I question your love for me

僕のことを愛しているか聞きたいんだ


Cuz baby you don’t make no sense.

だって君のことが理解できないんだから

The Drums – “Heart Basel”  対訳:多屋 澄礼

今の僕の人生は目障りでしかない

曲は、思わず踊り出したくなるのに歌詞が暗い。

雨の中でダンスをしたりタバコを一緒に吸ったりしたい

僕を呼びだして、また僕と一緒にやり直そうよ

の一節が切なく、良い。

空気が乾いたカリフォルニアに戻った僕たち

君の心は分かりやすいくらいクローズしてしまっている

ここのフレーズは、環境を変えたら恋人とうまくいくだろう、とのことでカリフォルニアに移り住んだ時の心情だろう。

僕の頭の中に広がる海

で始まるこの曲、

今の僕の人生は目障りでしかない、そう歌うけれど、ジョナサン・ピアースの頭の中に広がるクリエイションの海は、深く広い。それは悲しみを飲み込んで美しいポップスとして流れ出す。

気まぐれで現実逃避的なポップ・ソングを書いていた日々は、もう過去のものだね。

今の僕は幼少期の特別な思い出や毎晩の苦しみについて、よりダイレクトに歌うことができるし、こういうパーソナルなやりかたの方がずっとエキサイティングだと思ってるんだ。

ジョナサン・ピアース インタビュアー:渡辺裕也

こう語るジョナサン。

そして、現在は5枚目の『ブルータリズム』がリリースされ、より力強くなったザ・ドラムスを披露している。来日公演……待っています。。マジで。

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