ザ・ストロークス 『イズ・ディス・イット』 イズ・ディス・イット 歌詞考察

歌詞考察
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ロックンロールの救世主

2001年、ストロークスが登場したときは凄かった。

「ロックンロール・リヴァイヴァル」「ロックンロール・ルネッサンス」「ロックンロールの救世主」「今こそロックンロールをこの手に」そんな言葉とともに、彼らは雑誌の表紙を飾った。

そんなストロークスのデビュー・アルバムは『イズ・ディス・イット』

「これがそれなのか?」

「ロックンロールの救世主」に対する返答が「これがそれなのか?」だとしたら最高にイカしてる。

とにかくストロークスは凄かった。ある意味、それまでの音楽を塗り替えてしまった。ラウドでハイファイなサウンドはダサいものになり、古着を着てスカスカな音楽を演奏するのがクールなものになった。

追従するフォロワーも多く生まれ「ザ・~」と名乗るガレージ・ロックバンドが百花繚乱咲き誇り、今ではそのほとんどが風に吹かれて消えてしまった。

イズ・ディス・イット 和訳

分からないかな?

一応試してはみてるんだ

やっぱり気に入らないけど

適当に嘘をついて君のアパートに潜入

しばらくここにいるつもり

疲れすぎて頭が回らないから

これがそうなのか?

これがそうなのか?

これがそうなのか?

何でも与えると君に言った彼ら、もちろん嘘だった

その嘘を聞いた時、それはただの頑固な子供達だと僕には分かった

僕が彼らのすぐ後に座っていることを意識しないようにと頑張った

ねぇ、分からないかい?

ひどいのは僕じゃなくてあいつらなんだ

僕達は敵同士じゃない

ただ単に物の見方が違うだけ

でも完全に同意し合える相手なんて

そもそもいるものなのかな?

これがそうなのか?

これがそうなのか?

これがそうなのか?

THE STROKES 『IS THIS IT』“IS THIS IT” 対訳:岡本将生

これがそうなのか?

これは都市生活を送る若者たちの、それなりに楽しんではいるけれど、決して満たされない物語だ。

ジェイ・マキナニーの『ブライト・ライツ・ビッグ・シティ』やブレット・イーストン・エリスの『レス・ザン・ゼロ』の登場人物の若者のように、金はあるけど、夢や欲望は希薄。

一応試してはみてるんだ

やっぱり気に入らないけど

不機嫌で若者特有の傲慢さが歌詞にも表れている。「べつにどうでもいいや」という態度。

適当に嘘をついて君のアパートに潜入

しばらくここにいるつもり

疲れすぎて頭が回らないから

“イズ・ディス・イット”の歌詞は「いわゆるロック」らしくない。強い否定も拒絶もない。ここで描かれる曖昧な感情が、ストロークスを「クール」にしている要因なんじゃないかな。

「くたばっちまえ」という代わりにストロークスは、「 ただ単に物の見方が違うだけ」と言う。

そして、「 でも完全に同意し合える相手なんてそもそもいるものなのかな? 」とサラッと言い放つ。

「これがそれなのか?」と言いたくなる気持ちもわかるよね。

アメリカのロックはカート・コバーンの自殺によって一旦幕を下ろしたように思える。強烈な個性やカリスマは消滅し、世記が変わり、灰の原野のような真っ新な地平から放たれた言葉は「これがそうなのか?

ストロークスは曖昧にしているけど、ぼくにははっきりと言える。2001年という時代に待ち望んでいたロックは「これ(がそう)だった」と。

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