レトロサウンド、モダンな感性
ストロークスのデビュー・シングル“ザ・モダン・エイジ”
直訳すると「現代」
おれたちは「新しい世代」なんだ、という意気込みを感じさせる、傲慢でクールなタイトルだ。
タイトルは「モダン・エイジ」でもサウンドはけっこうレトロだ。スカスカで禁欲的なまでの反復ビートにダルなメロディが乗っかる。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやテレヴィジョン、トーキング・ヘッズを引き合いに出したいけれど、それらのエッセンスを感じてもなお、ストロークスはモダンだ。
ロックはテクノロジーの発展とともに進化してきた側面があると思うんだけど、ときどきこういったゲーム・チェンジャーが登場する。1991年のニルヴァーナや、94年のオアシスなんかがそうだ。どっちも標榜するサウンドは古い。だけど、彼らは時代の先頭に立つことになる。
2001年といえば、ゴリラズ、オウテカ、ジェイZが話題だったと思うんだけど、ストロークスは、新しい世紀の始まりに、「現代」という名前の曲で登場する。確信犯的にレトロなファッション、レトロなサウンドで。
“ザ・モダン・エイジ”をシーンに叩きつけたストロークスは、新しかった。
なぜこれがモダン・エイジなの? おそらくジュリアン・カサブランカスは煙に向くだろう。でも、ステージに立つ5人の姿は確信に満ちていた。
この曲の歌い出しは、 「丘の上、そこが僕達が始める場所――」そう、ここからストロークスは始まった。
ザ・モダン・エイジ 和訳
丘の上、そこが僕達が始める場所
遠い昔の小さな物語
気づかないふりはもうやめにしよう
そうでないとこのゲームはいつまでも
終わらなそうだから
太陽の中で、楽しんでいる
この血の中にすでにある感覚だから
止められないんだ
今は君を欲しくないから
行かせてくれ
行かせてくれ
時間どおりに出発して
しばらくあそこにいよう
海の上を転がっていく
彼女の視線、捕まえたくて
一生懸命働いて、簡単だと言おう
喜ばせてくれよ
明日は今日とは違うから
もう離れて行くふりはやめにするよ
僕達の恐れはそれぞれに違うね
AVA列車に一緒に乗っていても
君がとどまれなければ良かったと思う
僕の視界は今、前よりも澄んでいる
でも心配はしてない
海外に飛ぶ、潮風を受ける暇もなく
沢山訪れすぎる変化
太陽の中で、楽しんでいる
この血の中にすでにある感覚だから
止められないんだ
今は君を欲しくないから
行かせてくれ
ダーリン、行かせてくれ
時間どおりに出発して
しばらくあそこにいよう
海の上を転がっていく
彼女の視線、捕まえたくて
一生懸命働いて、簡単だと言おう
喜ばせてくれよ
明日は今日とは違うから
だからもう本当に行くことにするよ
THE STROKES 『IS THIS IT』 “The Modern Age” 対訳:岡本将生
僕の視界は今、前よりも澄んでいる
この曲は 「丘の上」から始まり、(どこかへ)旅立つところで終わる。
ストロークスは超お坊ちゃん集団で、ニューヨークのアッパーウェストサイドにある上流階級や富裕層が通う学校で出会っている。はっきりいってロックのストーリーとは程遠い出自ではあるけれど、理屈じゃない「何か」に突き動かされて彼らはロックの道に進んでいくことになる。多分、その「何か」を歌ったのがこの曲で、ストロークスにとっての宣言的な曲なんじゃないかな。
気づかないふりはもうやめにしよう そうでないとこのゲームはいつまでも終わらなそうだから
この世界には、気づいてしまった人と、気づかなかった人がいて、気づかない人はいつまでもゲームを降りれない。じゃあ、気づいた人は何に気づいたのだろう?
太陽の中で、楽しんでいる この血の中にすでにある感覚だから止められないんだ それは「楽しむ」ということ。そしてそれは「すでにある感覚」だから止められない。
行かせてくれ 行かせてくれ 曖昧さが身上のクールなジュリアンが「行かせてくれ」と歌う。ここの「マジ」さは凄くいいね。
僕達の恐れはそれぞれに違うね
明日は今日とは違うから 葛藤や感覚は人それぞれで、ストロークスは 海の上を転がっていく ことを選ぶ。
虚無な瞳でシャウトするジュリアンは、気づかないふりをして、日々を過ごしていた退屈なキッズたちを熱狂させた。止められない気持ちがあれば行けばいい。 “ザ・モダン・エイジ” はその気持ちを肯定する賛歌なんだ。
だからもう本当に行くことにするよと歌うジュリアンのその「視界は澄んでいる」
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