アルバムの核の一つ”オール・トゥモローズ・パーティーズ”
“オール・トゥモローズ・パーティーズ”は、ルー・リードがニコのために作った曲。アンディ・ウォーホルがヴェルヴェッツの曲の中で一番気に入っている曲でもある。
毎回キュレーターが変わり、演奏するミュージシャンはキュレーターのお気に入りのバンドやアーティストが集められる有名なロック・フェスティバル『オール・トゥモローズ・パーティーズ(All Tomorrow’s Parties、通称:ATP)』の名前はこの曲から取られている。
この曲は、本当に美しい。イントロの空気を切り裂いて「ドン…!ドン…!」と打ち下ろされるモーリン・タッカーのタム、ジョン・ケイルのリズムを連打するピアノ、ルー・リードのたどたどしい不穏なギター、退廃的で神秘的なニコの声、これらが組み合わさって独特でダークな美しい曲をつくりあげている。
ぼくがバンドをやっていた頃、よくこの曲をSEとして使っていた。ヴェルヴェッツの美にあやかろうとして。↓↓↓当時のCD。バナナをはがそうとした形跡が……!
この曲はアルバムの6曲目、アナログ盤だとA面のラストとなる。個人的には全11曲のアルバムの中心に位置するこの曲が、この記念碑的なアルバムの核なんじゃないかなと思っている。それだけの存在感を持った曲だと思うんだ。
それでは歌詞を見てみよう。
オール・トゥモローズ・パーティーズ 和訳
貧しい娘は何を着ていったらいいの
これから行われるすべてのパーティに
どこでパーティがあるか知ってる人から貰った安物のドレス
彼女は何処へ行くの? 何をするのかしら 夜中になったら
彼女はもう一度日曜日のおバカさんになるの
そしてドアの陰で泣くのよ
貧しい娘は何を着ていったらいいの
これから行われるすべてのパーティに
白いシルクと麻でできた古いガウンを
これから行われるすべてのパーティに着ていくの
木曜日のボロ服で一体彼女はどうするの
月曜日がきたら
彼女はもう一度日曜日のおバカさんになるの
そしてドアの陰で泣くのよ
貧しい娘は何を着ていったらいいの
これから行われるすべてのパーティに
木曜日の子供は日曜日のおバカさん
朝を迎えることはない
汚れた覆い布、安物のガウン
ボロ布、シルクのコスチュームは
座って泣いている娘に良く似合う
これから行われるすべてのパーティに着ていくの
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド ”オール・トゥモローズ・パーティーズ” 対訳:AKIYAMA SISTERS INC
貧しい娘は何を着ていったらいいの
この曲はいわばヴェルヴェット・アンダーグラウンド版「シンデレラ」だ。
主人公の少女は貧しく、ボロ布のような服しか持っていない。
この曲で何度も繰り返し歌われるのが、sunday’s clown(日曜日のおバカさん、道化師)。そんな彼女はドアの陰で泣いている。貧しさは悲劇だけど、他者からすればそれは滑稽に(clown)見えるということだろうか。
歌っているニコは、アンディ・ウォーホルのアイコンで、ファッションモデル。そんなスターの彼女が悲劇のヒロインの歌を歌うというのが面白い(後年、ヘロイン中毒でげっそり痩せてしまうわけだけど)。
そして1967年のアンディ・ウォーホルは時代の最先端だったずで、この古典的な題材を持った楽曲を愛していたという点も面白い。
この曲を書いたルー・リードの狙いはなんだったんだろう?
一つ言えるのは、ニコには悲劇がよく似合うということ。うつろな目でこの曲を歌うニコはまぎれもなく美しかったはずだ。ニコが在籍していた僅かな時間に、ニコの美を引き出す曲が生まれ、それが録音されたという奇跡にぼくたちは感謝すべきだろう。
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