ドラッグ・パーク『ユニオン・スクエア』
“ラン・ラン・ラン”ヴェルヴェッツの軽快なロックンロールナンバー。フィードバックギターとスウィングしながら、なげやり調に歌うルー・リード。シンプルなコード進行と、行先を見失いそうになりながらかき鳴らすギターソロが魅力。曲自体は60年代のロックのリズム。黒人のブルーズを白人がプレイしてる感じ。
ザ・キルズのファーストアルバムに収録されている『Hitched』はあきらかにこの曲の影響下にあると思う。退廃的でダルなロックンロール。
ちなみにストロークスのジュリアン・カサブランカスは『ラン・ラン・ラン』をカバーしていて、ハイエナジーな演奏をバックに、ルー・リードに寄せたボーカルを披露している。チョー余談だけど、ぼくもバンドでこの曲をカバーしたことがある。かっこいいよね。憧れるよね。
この曲は、マンハッタンのダウン・タウン、14番街と17番街との間にある悪名高いドラッグ・パーク、『ユニオン・スクエア』を散文的に描写した曲。悲惨な情景を冷徹に切り取っている。
ラン・ラン・ラン 和訳
10代の鏡、デイヴおじさんが言ったよ
俺の魂が見える、救わなくちゃ
歩くんじゃない、定規が必要だ
そこで何を見つけるかおまえには決してわからない
俺は見つけなきゃならなかったのさ
逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ
ドラッグの1本か2本持って
逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ
最高なものがおまえをつついてる
どうするつもりだい
もっと情熱が必要だ
彼らは彼女を釘づけにしなくちゃならなかった
彼女は気分が悪いんだ、病気になっちまった
彼女の魂を売りに出したのさ
そんなこと彼女は気にもしない
自分に何が買えるか
何を買うのか彼女は知らなかったのさ
彼女はそこに釘づけにされた
金色の鼻を輝かせ
頑丈なブーツ
軽く丸いつま先、彼女が青ざめた時
ああ、天使が叫ぶ
彼らは知らなかったのさ
彼女が見るべきものを見せられなかったんだ
ヒゲのないハリー
なんて無駄なんだ
町が味わえる以上のものを
得ることはできなかった
47番街まで路面電車を転がせ
奴は良い奴だって、あいつのおかげで天国だって
だって奴はそうしなくちゃならなかったんだから
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド ”ラン・ラン・ラン” 対訳:AKIYAMA SISTERS INC
俺の魂が見える、救わなくちゃ
この曲の登場人物たちは逃げる。
ドラッグの禁断症状から
魂を救うために
自分自身から、逃げる。
ドラッグの快感は、おそらく「自失」すること。自分を失うこと。自分を失うことは魂を売ること。
自分を失うことは楽しい。例えば酔っぱらうことは楽しい。金曜日の夜にお酒を飲んで前後不覚になって騒ぐことは楽しい。だけど、それぐらいでは自分自身から落っこちてしまうほどではない。結局、一夜のバカ騒ぎは限定的で、日常が先にあることを理解しているから楽しいのであって、取り返しのつかないことにはならない。
だけど、この曲の登場人物たちは「取り返しのつかない」ことをしている。魂(自分自身)を売って、天使の叫びが聴こえる状態になるまで失ってしまっている。
ルー・リードの弾くギターソロのふらつき具合が、売人を探して『ユニオン・スクエア』を歩く自失者を表現しているようで、素晴らしい(といっていいのかわからないけれど素晴らしい)。
みなさん、ケミカルを使って天国を目指すのは危険な行為だぜ! 自失はほどほどにネ。
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