ザ・キルズ/ノー・ワウ 歌詞考察

歌詞考察
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美意識に貫かれたロック・デュオ

2004年にリリースされたザ・キルズのセカンド・アルバム『ノー・ワウ』

イギリス人ギタリストのホテル(ジェイミー・ヒンス)と、アメリカ人シンガーのヴィヴィ(アリソン・モシャート)による大西洋横断デュオ ザ・キルズ

プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーが「なんてセクシーなんだ!」と絶賛したという、ハイセンスデュオだ。

バンド編成としては、最小の二人編成。ギターとボーカルとドラムマシーンというミニマルすぎる編成なのに、音にしょぼさは感じない。

そこが、ザ・キルズのセンス。特にこの曲に彼らの良さが凝縮している。

クールなPVだ。これ以上ミニマルにしようがないという緊張感のあるイントロと、ブゥゥゥンと唸るギター。抑圧された歌い出し。センス一発の4分間。

音楽をやっている人はめちゃくちゃ羨ましいんじゃないかな。こんな曲が自分のものだったらって思うよね。

瞬発力のあるいい曲を生み出すべく、インスピレーションを湧かせる素材に囲まれて作った

このセカンドアルバム『NO WOW』は、4週間で作曲からアルバム完成までをやり終えたという……WOW!マジかよ。

そもそもは、今まで作ってきた中でどんな曲に人気が集中するかって考えてみたときに「30分ぐらいで書けちゃったもの」って意見に到達したんだ。だったらその30分を限りなく20分に近づけて、更に瞬発力のある曲を生み出すべく、インスピレーションを湧かせる素材に囲まれて、身を任せて、適当にテープレコーダーを回して回しっぱなしにしてみようということのなったのさ。

ホテル 2004年 クロスビート

30分を20分に……!まあ、多少の誇張はあると思うけど、アイデア一発でアルバム作ったというのは本当なんだろう。だけど凄いね。

心臓の鼓動を集めたアルバムを目指した

ファーストアルバムは「頭で作ってしまった」ところがあると言う彼ら。まあ、ファーストの時は、ロンドンとフロリダでテープを交換しながら曲を煮詰めていったっていうからね(凄い!)。

歯がゆいプロセスでファーストを作ったからその反動で衝動的な方向に向かったのかも。

ホテルが言うには『NO WOW』は、1時間ぐらいぼーっと音楽を聴いたり、読書をしたり(何を読むんだろう)しながら高揚する瞬間を待って「今だ!」という瞬間に勢いでレコーディングした作品。

要するに、心臓の鼓動を集めたアルバムを目指したんだよ。

ホテル 2004年 クロスビート

とのこと。

歌詞もかなり衝動的だ。

ノー・ワウ 和訳

You’re gonna have to step over my dead body

私の死体を踏み越えて行きなさいよ、

Before you walk out that door

あのドアから出ていくんならね

You charmed me with your magic

あんたはその魔法で私を虜にした

Landed looking tragic

悲劇的な顏をして

“Forever” is the feather you ain’t got no more

永遠て言う羽 あんたはもう持ってない

And all the people you see coming by to save you

あんたを助けにきている人たちみんな

You’re make-believing-on in your mind

自分で自分を騙そうとしてるのね

Your eyes are holy rollin’, looking, beating, knocking

目玉をぐるりと回して 見てる 鼓動してる ノックしてる

The ceiling gets closer to you all the time

天井が刻々と近づいてくる

This ain’t no wow now

凄いことなんてないわ

They all been put down

みんなすっかりつまんなくなっちゃって

Who ain’t dead yet, fled to die closer to the shore

まだ死んでない連中は誰、死ぬために浜辺に逃げていった

This ain’t no wow no more

こんなのもう凄くも何ともない

Drip drip drip drip drip kinda’ like Drip drip drip drip drip kinda’ like Drip drip drip drip drip kinda’ like the loose end of the night

ポタッ ポタッ ポタッ ポタッ ポタッ まるで ポタッ ポタッ ポタッポタッ ポタッ まるで ポタッ ポタッ ポタッ ポタッ ポタッ ほどけた夜の端っこみたい

This ain’t no wow now They all been put down

凄いことなんてないわ みんなすっかりつまんなくなっちゃって

This ain’t no wow now

凄いことなんて何もない

There ain’t no wow now …

凄いことなんて何もない

対訳 田村亜紀

ほどけた夜の端っこみたい

歌詞を見てパッと思うのは、知性と衝動と適当さ。

冒頭の「私の死体を踏み越えて行きなさいよ、あのドアから出ていくんならね あんたはその魔法で私を虜にした 悲劇的な顏をして 永遠て言う羽 あんたはもう持ってない」

まるで、映画『俺たちに明日はない』のボニー&クライドのような男女の痴話喧嘩のようなシーンでスタートして、

Your eyes are holy rollin’, looking, beating, knocking

目玉をぐるりと回して 見てる 鼓動してる ノックしてる

雑な韻を踏み

Drip drip drip drip drip kinda’ like Drip drip drip drip drip kinda’ like Drip drip drip drip drip kinda’ like the loose end of the night

極めつけはこのdripの連続。音楽的な”言葉”が並び”ほどけた夜の端っこみたい”という詩的な言葉がやってくる。

こういうところにセンスを感じるよなー。ビッチっぽいキャラクターを持ったヴィヴィと、ルードボーイっぽいホテルの存在感。そこに音楽的インテリジェンスと知性が顔を覗かせる。

like the loose end of the night 夜という善悪の悪の部分のさらに端っこ。自分たちの立ち位置を表明している言葉に感じる。ロック界の中でも俺たちはアウトサイドに立っているんだぜ、というような。

There ain’t no wow now 

タイトルになったNOWOWだって多分Drip drip drip drip dripと一緒で感覚的なものだと思うし、こういった言葉をチョイスして、”まだ死んでない連中は誰、死ぬために浜辺に逃げていった” ”ほどけた夜の端っこみたい”と世界観を出してくる。「ワルなのに知的、そして世界観がある」って、ロックバンドが憧れる要素だよね。うーん、凄い。インディーっぽい雰囲気をキープしながら、ロックの最前線に立つってのはロマンだよね。

キルズはいつかライブで観てみたいバンド。出演していた2008年のサマーソニックに行ったんだけど、直前に機材トラブルで中止になるっていうね……。

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