投稿作品小説 『時の流れと想いの彼方にある部屋で』 深墨けいく 時の流れと想いの彼方にある部屋でここへ初めてきたのは二十年以上前のことだったと思う。あの頃のわたしは疲れ果てていたし、わたしの母も既に十分に老いていた。わたしはお酒が飲めなかったので夕食時には母だけが、御猪口一杯の日本酒を三杯飲んだ。あれは...2023.02.08投稿作品
投稿作品小説 『ある朝の風景 2』 深墨けいく ある朝の風景② 体に抱えていたはずの、あなたの熱は遠の昔に冷えてしまっている。 季節の移ろいとともに、あんなにも早い時間から姿を現していた太陽は、今のこの時期、私が起きなくてはならない時間になっても現れない。 夏の間は目覚める前からうっすら...2022.11.20投稿作品
投稿作品小説 『ある朝の風景』 深墨けいく ある朝の風景①カサカサという感触の、波をふらふら通り抜ける。手を伸ばしたその先にあるはずの体温を探している。シーツの波間を泳いだこの手が、ふと触れる。あなたの体温。そのあたたかさを、心地よく思う。指先から、じわんと伝わる他人の体が持つ熱は、...2022.11.01投稿作品