深墨けいく

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小説 『時の流れと想いの彼方にある部屋で』 深墨けいく

時の流れと想いの彼方にある部屋で ここへ初めてきたのは二十年以上前のことだったと思う。あの頃のわたしは疲れ果てていたし、わたしの母も既に十分に老いていた。わたしはお酒が飲めなかったので夕食時には母だけが、御猪口一杯の日本酒を三杯飲ん...
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小説 『ある朝の風景 2』 深墨けいく

ある朝の風景②  体に抱えていたはずの、あなたの熱は遠の昔に冷えてしまっている。  季節の移ろいとともに、あんなにも早い時間から姿を現していた太陽は、今のこの時期、私が起きなくてはならない時間になっても現れない。  夏の...
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小説 『ある朝の風景』 深墨けいく

ある朝の風景① カサカサという感触の、波をふらふら通り抜ける。 手を伸ばしたその先にあるはずの体温を探している。 シーツの波間を泳いだこの手が、ふと触れる。 あなたの体温。 そのあたたかさを、心地よく思う。 ...
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