ヴェルヴェット・アンダーグラウンド 『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』 シスター・レイ 歌詞考察

歌詞考察
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何をやるつもりなんだ? 始めようとしてるんだ――

『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』を聴くということは“シスター・レイ”を聴くことだ。

そう言い切りたくなるぐらい、 “シスター・レイ” はこのアルバムの、いや、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド全部を象徴するような曲だ。過激で、退廃的で、刹那的で、とりとめもなく、美しい。

17分を超える大作で、しかも一発録りというこの曲はヴェルヴェッツの魔力が溢れている。ハレーションを起こすジョン・ケイルのオルガンと、荒々しいリフから怒涛のインプロヴィゼーションに入るルー・リードとスターリング・モリソンのギターの絡み、モーリン・タッカーのタイトで印象的なドラム。あまりの爆音でどこもかしこも漏電し、あまりの曲の長さにレコーディング・エンジニアは部屋から出て行った。

俺はセシル・テイラーやオーネット・コールマンをメチャクチャ聴いてきたんだが、ロックン・ロールのフィーリングにも、ああいうものが欲しいと思っていたんだ。「シスター・レイ」を録った時、俺達は音量をレベル10まで最大限に引き上げ、そこら中に音漏れを出した。それがあのレコードだ。スタジオの連中は訊いてきた、『何をやるつもりなんだ』とな。そこで『始めようとしてるんだ』と答えた。『ベースは誰が弾くんだ』と訊かれたので、『ベースはない』と言った。するとまた訊くんだ。『どこがエンディングなんだ』。それは俺達にも解らなかった。終わる時がその曲のエンディングなんだ。

『アップ・タイト』 ビクター・ボクリス ジェラード・マランガ共著 訳:羽積秀明

「始めようとしてるんだ」そして、「終わる時がその曲のエンディングなんだ」とルー・リードは話す。

実際、その通りになったといえる。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはこのアルバムでジョン・ケイルが脱退して、ある意味終わった――。

この曲で、ヴェルヴェッツは行けるところまで行ってしまった。

シスター・レイ 和訳

サリーの道を歩いてる

焚き火へと続く曲がった道

ぐらぐらしながら立っているのは誰だ

ビッグ・バンドをなめ尽すのに夢中になってる奴は

俺は主要道路を探してるんだ

裏道は通らないぜ

俺は裏道は通らないんだ

シスター・レイが言ったみたいに

生きていけって

迷って揺れている

彼女の気取った男が来るのをみんな待ってる

キャロライナから戻ってきたばかりさ

いやな天気だわって彼女は言う

彼女の水兵が来るのをみんな待ってる

皮を作るのに必死になってる奴さ

アラバマから来たんだって

奴は金儲けがしたいんだ

俺は主要道路を探してるんだ

裏道は通らないぜ

俺は裏道は通らないんだ

まるでシスター・レイの言う通りだな

やり続けろって

シーザーは新しいギグを始めた

ショーは3時から4時の設定さ

奴は水兵を狙ってるんだ

水兵は撃ち殺され床に倒れた

そんなことしちゃいけないのに

カーペットが汚れるじゃないか

そうさ、カーペットが汚れるじゃないか

ところで1ドル持ってるかい?

オーノー、俺は時間がないんだ

ペニスをしゃぶるのに大忙しさ

俺のペニスをしゃぶるのに大忙しなんだ

彼女はまるでシスター・レイが言ったようにやるんだ

俺は主要道路なんか探してないさ

裏道なんかにいけないんだ

だめさ、裏道なんかにはいけないんだ

おお、もう床中に床中に広がっていく!

ドアを叩いているのは誰だ?

ドアの間を叩いているのは

ボニーのはずはないな

奴らはやってきて俺に乗れ乗れって言うんだ

ああ、だけど俺には時間がないんだ

ヘイヘイヘイ、彼女しゃぶるのをやめちまった

彼女は俺のペニスをしゃぶるのに大忙しなんだ

まるでシスター・レイが言ったみたいだな

俺は主要道路を探してるんだ

裏道にはいけないからな

裏道にはいけないから

そうなんだ

VELVET UNDERGROUND Sister Ray TRANSLATED BY AKIYAMA SISTERS INC.E

シスター・レイが言ったみたいに

この曲の歌詞はコネチカットのギグから戻る列車の中で書かれた。

内容は、デカダンス。ファーストアルバムで描いた世界をよりディープにした物語だ。

俺は主要道路を探してるんだ

裏道は通らないぜ

俺は裏道は通らないんだ

は、後に「ワイルドサイドを歩け」と歌うルー・リードを考えると面白い。ただ、この 俺は裏道は通らないんだという歌詞(I couldn’t hit it sideways)は、なにか別なことを歌っているような気がしてならない。 I couldn’t hit it sideways (俺はサイドにヒットできなかった)というのは、どう考えても薬物に関する描写だろう。そう考えると、シスター・レイが言ったみたいにやるんだの意味が大きく変わる。

この曲の舞台となる場所で男たちは乱交パーティを行っている。それもどうやらゲイの乱交パーティのようだ( オーノー、俺は時間がないんだペニスをしゃぶるのに大忙しさ )。

水兵は撃ち殺され床に倒れた

唐突に起こる殺人に、誰も関心を向けない( カーペットが汚れるじゃないか  ところで1ドル持ってるかい? )。

イカシた水兵を待っていたのに、気にも留めずに退廃にふける。

シスター(聖職者)を反転させた存在として描き、同性愛(男娼?)と、ドラッグと、殺人を一曲の中で描ききったルー・リード。

アンフェタミンの効果を歌った曲で幕を開けた『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』

白い光は、混沌とデカダンスの渦の中で幕を閉じる。

この曲一曲でヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、軽快でお気軽なロックンロールを「芸術」の領域に持ち上げた。それは「アンダーグラウンド」な領域を歌った芸術だ。

ロックを「シリアス」にしたのは間違いなく彼らだ。商業的な成功は得られなかったけれど、影響力は凄まじい。だって未だにヴェルヴェット・アンダーグラウンドは「新しい」

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