杉並区の片隅で”コロンビア”を聴いた日
俺がオアシスをちゃんと聴いたのはけっこう遅くて、上京してから3年ぐらい経ったころ。たしか2003年か2004年ぐらいだった。
十代の頃はニルヴァーナが1番偉くて、ホール、ソニック・ユース、スマッシング・パンプキンズ、マッド・ハニー、メルヴィンズ、レッド・ホット・チリペッパーズ、ベック、レディオヘッド、プライマル・スクリーム、ストーン・ローゼス、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ジーザス・アンド・メリー・チェインなどの90sロック、そこからルーツを辿って、UKパンクとニューヨークパンクを掘り下げていき、同時代の日本のバンドはブランキー・ジェット・シティが自分の中で頂点で、ミッシェル・ガン・エレファント、スーパーカー、くるり、椎名林檎、ドラゴン・アッシュ、ブラフマン、グレイプ・ヴァインとかを聴いていた。
グリーン・デイとかオフ・スプリングは当時あまりハマらず、NINとマリリン・マンソンはけっこう好きだったけど、コーンとかのヘヴィネス系はそこまで自分の中で盛り上がらず……。
そしてUKを代表するビッグ・バンド「オアシス」は、好きも嫌いもなく全く聴くことがなく十代を通過してしまっていた!
だから、“スーパー・ソニック”も“シャンパン・スーパー・ノヴァ”も“リヴ・フォーエバー”もタイトルだけは知っていたけど、聴いたことがないから、「どの曲がそれなんだろう……」と思って杉並区の端っこで焦げ跡のついた毛布をかぶっていたんだけど、高円寺に住んでいた同郷の友達が、よく路上で弾き語りをしていて、たまにくっついて遊んでいたんだけど、そいつがけっこうオアシスを演奏していたんだよね。それが、俺の初めてのオアシス体験。だけど、間接的な視聴だから、ちゃんと聴いたとは言い難い。
初めてちゃんとした形でオアシスを聴いたのは、チャーミングな友人が2002年ベルリンで演奏したオアシスのVHSを観せてくれたのが最初。そのVHSのオープニングナンバーが“コロンビア”だった!
2002年だから『ヒーザン・ケミストリー』がリリースされた頃。ボーンヘッドとギグジーはもういない。ザック・スターキーはまだ加入前。
今、記憶を頼りにこの動画がYouTubeに上がっていないかなと確認したら、あったんだけど、オープニングが“ゴー・レット・イット・アウト”なんだよな……。だけど、友人の持っていたVHSは”コロンビア”スタートだったんだけどなぁ。
まあ、とにかくぼくが初めて聴いたオアシスの曲は”コロンビア”だった。
めっちゃ、かっこいいじゃん! というのが最初の感想で、リアム・ギャラガーの声が凄い!バンドメンバー全然動かない!ギャラガー兄弟のどちらも上下デニムで、リアムはマフラー(暑いだろ)、ノエルは第一ボタンまでぴっちり閉めてる(だから暑い)! と、衝撃のオアシスだった。
リアム・ギャラガーは、人を誉めない。けなすことのほうが圧倒的に多い。嫌いとなったら徹底的にディスる。
そんなリアム・ギャラガーにも尊敬する人物がいる。
ジョン・レノンとイアン・ブラウンだ。
前者は神で、後者は同郷マンチェスターのスーパー・スター。リアムがバンドを始めるきっかけを作った存在だ。
リアムはノエルと違って、音楽に特別な興味はなかったし、音楽よりもサッカーとアルコールが好きで、なんならギターを背負ってるやつを街で見かけると「くだらねえ」と思っていたらしい。
それが、ストーン・ローゼスのマンチェスター公演を兄弟で観て価値観が変わる!
リアムはこの時のストーン・ローゼスのライブを観てイアン・ブラウンの存在感に目を奪われ、自分の一部を持っていかれた、と語る。
リアムは、ステージ・パフォーマンスや立ち振る舞いなんかをイアン・ブラウンから学んだんだと思う。尊大なガニ股歩きとかそっくりだしね!
そして、ノエル・ギャラガーもこの日のライブをきっかけにインスパイラル・カーペッツと知り合いになり、彼らのローディーになることでミュージシャンとしてのキャリアを積んでいく。
さて、話は”コロンビア”へ。
めちゃくちゃストーン・ローゼスなサウンドだよね! サイケ調で、ダンサブルで、マッドチェスターな空気感を感じるサウンドだ。そして歌詞はというと。
コロンビア 和訳
There we were now here we are
あの境地にいた筈なのに今はこんな心境にいる
All this confusion nothings the same to me
困惑するような事ばっかりさ俺にとっては全てが混乱して見える
There we were now here we are
あの頂点にいた筈なのに今はこんなドン底にいる
All this confusion nothings the same to me
混乱するような事ばっかりさ俺にとっては全てが困惑して見える
But I can’t tell you the way I feel
でも俺の本音を売るなんて真似はできない
Because the way I feel is oh so! new to me
だって俺が抱いてる想いってのはかつてなかった種類のもの
No I can’t sell you the way I feel
いや俺の本音を売るなんて真似はできない
Because the way I feel is oh so! new to me
だって俺が抱いてる想いってのはかつて経験しなかった種類のもの
What I heard is not what I hear
俺がかつて聞いた噂は全くのデマだったし
I can see the signs but they’re not very clear
別天地への指標が見えても肝心のところで見失ってしまう
What I heard is not what I hear
俺がかつて聞いた話は全くの作り話だったし
I can see the signs but they’re not very clear
別世界への指針が見えても肝心のところで見失ってしまう
This is confusion am I confusing you?
とんでもない混乱、君まで困惑させてるかい?
This is the pecuuliar I don’t want to fool you
凄く奇妙な話だけど 君を騙す気はないんだ
oasis COLUMBIA 対訳:児島由紀子
ちょっと、ノエルやリアムの口調に思えない和訳だけど、、言いたいことはわかる。
それは……
There we were now here we are
前はそっちにいたけど、今はここにいる
前は、そっち(客席)にいたけど今はここ(ステージ)にいる。
憧れた存在に、今は俺たちがなっているんだぜ! というような曲なんだろう。
オアシスファンの中ではこの曲がどういう位置なのかわかんないんだけど、多分、この曲が1番好きという人はあまりいないんじゃないかな。ベスト5でも厳しいかも。まあ、オアシスは偉大な曲が多すぎるから仕方ないけどね
このマンチェスターの系譜を感じる”コロンビア”はファーストの『ディフィニトリー・メイビー』で異彩を放っている。
ノエルはこの曲のリフを思いついた時に「これでいける!」と思ったらしい。そんな自信やエネルギーが曲から溢れているように聴こえる。
今は2020年8月。オアシス再結成は今後あるのでしょうか。俺はあると思っています。だって、偉大な先輩のイアン・ブラウンは、ストーン・ローゼスの再結成はあり得ない! って散々言っていたくせに再結成したんだもの。
もしそうなった時は”コロンビア”をプレイしてください。お願いします。そしてライブの途中で喧嘩してもいいから帰らないでください。お願いします。
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