ベック 『オディレイ』 ハイ5(ロック・ザ・キャッツキルズ) 歌詞考察

歌詞考察
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フリークアウトしたオルタナティヴ・ヒップホップ・ナンバー

“ハイ5(ロック・ザ・キャッツキルズ)”は、ノイジーなボーカル(5ドルで買ったプラスティックマイクで録音したらしい)と、ヒップホップビートと、強烈にフリークアウトしたエナジーに溢れたナンバーだ。混沌としていて捉えどころがなく、野卑だけどピュア、クールだけど野蛮、最高だ。

『オディレイ』にはサウンドコラージュ的な曲がたくさん収められているけれど、“ハイ5(ロック・ザ・キャッツキルズ)”が最もクレイジーで、最もオディレイ的な曲だと思う。

ベック自身が「ごちゃ混ぜソング」と呼ぶこの曲、どんなことを歌っているのだろう?

“ハイ5(ロック・ザ・キャッツキルズ)” 和訳

俺が着いたら手を打ち合わせてハイ・ファイヴ

さもなきゃ顔面平手打ちってのもいい

俺は毎日 車椅子暮らし

見れば 無鉄砲なフリして飛び回る

ご立派に騒ぎを起こそうと

威勢よく登場したわけじゃない

ヒョウの毛皮がレコードを回す

グルグルと 音速で

ハイ・ファイヴ 生きてるというより死んでる感じ

キャットスキル山脈を揺るがす

棺桶から出てきた人みたいに

ロッキー山脈 行くしかない

仕掛けはランダム・モードに入れて

ぎこちなく 並んでユラユラ

血眼のルンバも 足元は犬並のフォックストロット

いつもの小屋で汗まみれ ビールまみれに 涙まみれ

新境地がこっちへやってくる

デキシーランドのフリスコ・ベイで

ジュースを売ってるオヤジのところから

Beck ODELAY HIGH 5(ROCK THE CATSKILLS) ベック オディレイ ハイ5(ロック・ザ・キャッツキルズ) 対訳 染谷和美

新境地がこっちへやってくる

かなりナンセンスな言葉の連なりが続くけれど、よく見ると「両極を行き来」しているかのようなワードが続いているような気がする。

手を打ち合わせてハイ・ファイヴ←→さもなきゃ顔面平手打ちってのもいい

俺は毎日 車椅子暮らし←→無鉄砲なフリして飛び回る

生きてる←→というより死んでる感じ

キャットスキル山脈(キャッツキル山地 東部)←→ロッキー山脈(西部)

一見、脈絡がないように見えても何かでバランスをとっているかのような言葉たち。これらから感じるのは、ベックの音楽表現そのものだ。

ポップの曲にはノイズを。フォークソングにはビートを。ヒップホップにはハードロックのサンプリングを。モダンなサウンドにはブルースを……

ぎこちなく 並んでユラユラ

血眼のルンバも 足元は犬並のフォックストロット

いつもの小屋で汗まみれ ビールまみれに 涙まみれ

ルンバもフォックストロットも社交ダンスのスタイルだ。“ハイ5(ロック・ザ・キャッツキルズ)”のハイパーなビートに合わせて、これらのワードが出てくるのが面白いし、続く歌詞が、新境地がこっちへやってくるというのも面白い。

ベック版フルクサス・ミュージックといえる傑作ナンバーだ。

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