R.E.M 12枚目のアルバム『リヴィール』収録のヒット・チューン
2020年8月9日(日)東京都杉並区 気温35度
暑い。
多分、ぼくが地元の福島県伊達郡に住んでいた頃の子ども時代は8月といっても30度を超えることなんてめったになかったと思うんだけど。もうこの気温が普通になっちゃったのかな……。
それは、まあ置いておいて、ぼくには夏になると聴きたくなるアルバムがある。それが、このR.E.Mの『リヴィール』
アルバム全体を聴くと、思いっきり「夏」という感じではなく、夏の終りから秋にかけての雰囲気かな。どこか寂しく、ああ、いい季節は終わってしまったんだな……というような寂寥感を感じるアルバムだ。
この『リヴィール』なんだけど、R.E.Mの膨大な歴史の中ではあまり語られないアルバムのような気がする。よく雑誌の企画や個人ブログなんかで「R.E.Mのアルバムベスト10!」とかやってるけど、上位にくい込んでくるのを見たことがない。
まあ、いいさ。
ぼくは東京都の端っこでこのアルバムを聴くのが好きなんだ……! 村上春樹だって、“イミテイション・オブ・ライフ”が好きなんだぞ。
『村上ソングス』に取り上げて歌詞の和訳をしてるぐらいだから好きだよね……。
イミテイション・オブ・ライフ 和訳
Imitation of life
Charades, pop skill
おかしなアクション ポップのテクニック
Water hyacinth
水栽培のヒヤシンス
Named by a poet
詩人による命名
Imitation of life
作りものの人生
Like a koi in a frozen pond
まるで凍った池の鯉みたい
Like a goldfish in a bowl
まるで金魚鉢の金魚みたい
I don’t want to hear you cry
君が泣くのは聞きたくないね
That sugarcane that tasted good
それは素敵な味のサトウキビ
That’s cinnamon,
それはシナモン
that’s Hollywood
それはハリウッド
Come on, come on No one can see you try
いい加減にしろよ 君が努力してるなんて誰にもわかりっこないさ
You want the greatest thing
最高のものを求めている君
The greatest thing since bread came sliced
パンがスライスされるようになって以来最高のものを
You’ve got it all You’ve got it sized
君はすべてを手に入れ それを大小順に並べた
Like a Friday fashion show
まるで金曜日のファッションショーみたいに
teenager Freezing in the corner
隅っこで凍えてるティーンエイジャー
Trying to look like you don’t try
努力してるように見えないように努力してる
That sugarcane that tasted good
それは素敵な味のサトウキビ
That’s cinnamon,
それはシナモン
that’s Hollywood
それはハリウッド
Come on, come on No one can see you try
よせやい 君が努力してるなんて誰にもわかりっこないさ
No one can see you cry
君が泣いてるなんて誰にもわかりっこないさ
That sugarcane that tasted good
それは素敵な味のサトウキビ
That’s freezing rain,
それは凍えそうな雨
that’s what you could
それが君にできたこと
Come on, come on No one can see you cry
まさかだろ 君が泣いてるなんて誰にもわかりっこないさ
This sugarcane,
こんなサトウキビ
this lemonade
こんなレモネード
This hurricane,
こんなハリケーン
I’m not afraid
怖くないよ
Come on, come on No one can see me cry
とんでもない 僕が泣いてるなんて誰にもわかりっこないさ
This lightning storm,
こんな雷雨
this tidal wave
こんな大津波
This avalanche,
こんあ雪崩
I’m not afraid
怖くないよ
Come on, come on No one can see me cry
とんでもない 僕が泣いてるなんて誰にもわかりっこないさ
That sugarcane that tasted good
それは素敵な味のサトウキビ
That’s who you are,
それが君って人間
that’s what you could
それが君のやったこと
Come on, come on No one can see you cry
まさかだろ 君が泣いているなんて誰にもわかりっこないさ
That sugarcane that tasted good
それは素敵な味のサトウキビ
That’s who you are,
それが君って人間
that’s what you could
それが君のやったこと
Come on, come on No one can see you cry
まさかだろ 君が泣いているなんて誰にもわかりっこないさ
R.E.M REVEAL 対訳 沼崎敦子
作りものの人生
マイケル・スタイプの歌詞の書き方って素敵だよね。
だいたいポップ・ミュージックの常としてタイトル(Imitation of life)はサビかAメロの頭にくるもんなんだけど、Aメロの最後にちょこんと配置されている。
R.E.Mは、カート・コバーンやトム・ヨーク、ペイヴメントのスティーブン・マルクマスにもリスペクトされていて偉大なバンドなんだけど、どこか控えめというか、歌詞を読んでもそんな印象を受ける。お洒落というか、洗練されているなあ、と。
おかしなアクション ポップのテクニック 水栽培のヒヤシンス 詩人による命名 作りものの人生 まるで凍った池の鯉みたい まるで金魚鉢の金魚みたい
歌詞というより、印象の羅列というか、詩に近いよね。だけど、すごくイメージがつかめるというか、意味として捉えずに”印象”でリスナーに「作り物の人生」を想起させる手法を取っているみたいだ。
That sugarcane that tasted good それは素敵な味のサトウキビ That's cinnamon それはシナモン that's Hollywood それはハリウッド
村上春樹がたしか「R.E.Mの歌詞はファジーで、曖昧で、感覚的で、ちょっと不親切」と言っていたと思うんだけど、確かに、それはサトウキビで、それはシナモンで、それはハリウッドとか言われてもねって感じかも。
シュガーケーンはマリリン・モンロー?
That sugarcane that tasted good それは素敵な味のサトウキビ
サビのシュガーケーンは、それはサトウキビと訳されているわけだけど、もしかしてこのシュガーケインって「お熱いのがお好き(Some Like It Hot)」というハリウッド映画で、マリリン・モンローが演じた金髪娘シュガー・ケーンのことなんじゃない? とふと思った。
そう思うと、ちょっと無意味そうなこの歌詞も少しクリアになる気がする。
マリリン・モンローは生涯、自らのペルソナに苦しめられた人だったと思うから。
Imitation of life 作りものの人生 模倣の人生
ハリウッドを象徴する空虚な人生について歌った曲
マイケル・スタイプは、15歳でパティ・スミスに憧れてバンドを始める。その後、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドや、テレビジョンを知り、パンクにのめりこんでいくわけなんだけど、自身のバンドが巨大になっていくうちに成功の空虚さも味わっていったんだろうな、と思う。
レディオヘッドのトム・ヨークが、マイケル・スタイプにツアーのプレッシャーがきついんだ、と相談した時に「I’m not here, this isn’t happening ぼくはここにいない、これは現実じゃない、と思えばいいんだよ」とアドバイスしたように(このアドバイスからKID A収録曲”How to Disappear Completely”が生まれる)、マイケル・スタイプは、どでかい音楽ビジネスを航海していく術を身につけていったんだろう。
さて、ぼくはこの夏を乗り切るために、パンがスライスされるようになって以来最高のこの音楽を聴くことにするよ……。
それではまた!
コメント