この曲にはメロディはない だけど、言葉はある
規則的なドラムパターンと、千切れてしまいそうな音像が流れていく中、不気味なヴォイスでつぶやかれる。デジタルで不穏なサウンドをもった“パルク/プル・リヴォルヴィング・ドアーズ”は『OKコンピューター』でいうところの“フィッター・ハッピアー”みたいな感じの曲だ。
この曲にはメロディはない。だけど、言葉はある。そしてその言葉は象徴的だ。
パルク/プル・リヴォルヴィング・ドアーズ 和訳
正面玄関ドアがある、そして回転ドアがある
大きな船の舵に付いた扉
そして回転ドアがある
ひとりでに開くドアがある
引き戸がある、そして隠し扉がある
鍵のかかる扉と、かからない扉がある
出入りは出来るのに、決して抜け出せない扉がある
だが入ったら二度と戻って来られない落とし戸がある
Radiohead Amnesiac Pull/Pulk Revolving Doors 対訳:今井スミ
入ったら二度と戻って来られない落とし戸がある
正面玄関ドアが「ある」
回転ドアが「ある」
ひとりでに開くドアが「ある」
引き戸が「ある」
そして隠し扉が「ある」
この世界には無数のドアがある。
おそらく、ドアは可能性の象徴だ。ぼくたちはドアを開けて、「ここ」から別な場所へと移動する。
ただ、現実には、出入りは出来るのに、決して抜け出せない扉がある
そして、入ったら二度と戻って来られない落とし戸がある
トム・ヨークは、それに対して「気をつけろ」と言っているわけではない。ただ「ある」と言っているだけだ。決して抜け出せない、二度と戻ってこれないという現実があるんだ、と。
それは現実の「行き止まり」
絶望の一部を描写した声は、非メロディックにささやかれる。
リンク
リンク
コメント