ニルヴァーナ 『イン・ユーテロ』 ダム 歌詞考察

歌詞考察
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若さ、愚かさを歌った佳曲

皮肉屋のカート・コバーンがスウィートに、素直に歌う佳曲“ダム”

カートは「恋に落ちた状態」を“まぬけ“と表現する。

曲は『ネヴァーマインド』期に“ポーリー”をもてあそんでいる時に生まれた。“ポーリー”は「レイプ」という恋愛の歪んだかたち、過度に邪悪なテーマを持っていたけれど、“ダム”は過度に甘い恋がテーマだ。

『イン・ユーテロ』には攻撃的な曲が多い中、この甘いメロディを持つ曲が入ることで一線を画したロック・アルバムになっている。カートのビートルズ、ヴァセリンズ、レインコーツなどを愛好する気持ちがあらわれているのかな。それか、この甘いメロディが反マッチョのしるしなのかも。

Nirvana – Dumb (Live at Reading 1992)

エレクトリックギター弾き語りっていいよね。アコギだと甘くなりすぎるし、カートのぶっきらぼうな声と相まってありきたりな曲に感じない。ラストのデイブ・グロールのコーラスもいいよね。

ダム 和訳

俺は奴らとは違う

だけど俺だって

いろんなふりをすることができる

太陽が沈んでしまっても

俺には光がある

全盛期が終ってしまっても

俺は楽しんでいる

俺って大馬鹿なんだろうな

それともただおめでたいだけなのか

きっとおめでた野郎なんだろう

俺の心は引き裂かれてしまったけど

俺には接着剤がある

俺に吸わせておくれ

おまえと一緒に直させておくれ

俺たちは空中を漂い

雲の上で一休み

それから地上に降りてきて

ひどい二日酔いに悩まされる

後遺症に悩まされるんだ

太陽に膜をかけて

ひと眠り

とっとと消えておくれ

魂なんて安っぽいものさ

いろいろと体験してわかったよ

俺の幸運を祈っておくれ

ほてりを鎮めておくれ

俺を起こしておくれ

俺は奴らとは違う

だけど俺だっていろんなふりをすることはできる

太陽は沈んでしまっても

俺には光がある

全盛期が終ってしまっても

俺は楽しんでいる

俺って大馬鹿なんだろうな

ニルヴァーナ 『イン・ユーテロ』”ダム” 対訳:中川五郎

魂なんて安っぽいものさ

若くて、愚かで、恋に落ちている恋人たちの心情をカート流に歌にしている。

俺は奴らとは違う

だけど俺だって

いろんなふりをすることができる

若いうちはだいたいこんなことを考えている。俺は人とは違う人間なんだって。

太陽が沈んでしまっても

俺には光がある

全盛期が終ってしまっても

俺は楽しんでいる

俺って大馬鹿なんだろうな

それともただおめでたいだけなのか

きっとおめでた野郎なんだろう

若者にとって「一日」は軽い。あっという間に陽が沈み、次の日がくる。生産性のない日々でもダラダラと楽しむことができる。反省はしない。俺ってまぬけだなって思うだけ。

俺の心は引き裂かれてしまったけど

俺には接着剤がある

俺に吸わせておくれ

おまえと一緒に直させておくれ

俺たちは空中を漂い

雲の上で一休み

それから地上に降りてきて

ひどい二日酔いに悩まされる

後遺症に悩まされるんだ

ここが非常にカートらしいな、と思う歌詞だ。接着剤吸引は安価なラリリ遊びで貧困国でも社会現象になっている。接着剤に含まれるトルエンを吸うとドーパミンの生成を促し高揚感をもたらすけれど、翌日は無気力、吐き気、ようは二日酔いみたいな状態になる。

恋に落ちた状態というのは、この「安価な接着剤遊びで引き裂かれた心を接着して(おまえと一緒に直させておくれ)一緒に空を飛んで次の日に一緒に落ち込む」状態だ、と歌っている。ようはまぬけになることだ、と。

もちろん俺って大馬鹿ってことなんだけど、しょうがない。恋に落ちるっていうのはそういうものなんだから。

ハードドラッグではなくチープな接着剤を恋の歌の題材に選んだところがカートの凄いところだ。だから魂なんて安っぽいものさという一節も曲調通り軽やかに響く。代表曲ではないけれど不思議と何度も聴きたくなってしまう曲である。

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