ガレージロックの可能性
ストロークスが単なるガレージロックバンドと一線を画しているのは、バンド・アンサンブルが絶妙なところだと思う。とくに顕著なのがこの“アローン・トゥゲザー”だ。
イントロの細かいギター×2とベースのコンビネーションは秀逸。サウンドはガレージロッキンしてるのにアイデアがモダンなんだな。そしてこの曲のキモはただクールなだけではなく、弾くところはガシガシいくし、ボーカルもサウンドに呼応してエモーショナルにがなるところ。
今、聴いてもマジでユニークな曲だな。ボーカルが入ったと同時に弾くアルバート・ハモンドJRのバッキングがかっこいいんだ。……そういえば、リリース当時にロックDJたちはかなりの頻度でこの曲を流していたのを思い出した。この脱臼したようなイントロが鳴るとフロアが揺れていたな~。
ガレージロックの直線的な方向にカーブを与えたストロークス。それをしれっとやっちゃうところが都会っ子って感じがするな。
アローン・トゥゲザー 和訳
選択の余地はもう無い、手遅れだ
行かせてやれ、彼はもう諦めたから
リサは言う「私のために時間を割いて」
彼をひざまずかせながら
胸を下げさせながら
俺を連れていってくれ
今俺は、奴らがあまりにみ永久的に
変えてしまった物事を
説明しなければいけない
人生が現実でないようだ
君の部屋に二人で行かない?
「あなた、飲みすぎよ」と君は言う
でもそれは君も同じだ
人々は試してきた
そしていい気分になった
自分自身に上手いアドヴァイスを与えながら
時々足元を見ていい気分になりながら
彼は知ってる、生き残るために殺すのは構わないと
だから紙幣のために死人を沢山出す
もっと血を啜ろう、一日3時間走ろう
世界は終わったけど俺は気にしない
なぜなら
君と一緒だから
今俺は、奴らがあまりにも永久的に
変えてしまった物事を
説明しなければいけない
人生が現実でないようだ
君の部屋に二人で行かない?
「あなた、飲みすぎよ」と君は言う
でもそれは君も同じだ
初めは、速く起こりすぎた
2回目は、長く続きそうな気がした
人はみな、他人と少し違っていたい
THE STROKES 『IS THIS IT』 “Alone,Together” 対訳:岡本将生
世界は終わったけど俺は気にしない
ジュリアン・カサブランカスのアルカホリックぶりは有名だよね。
どうやらこの曲は、アルコールと、ナイトライフと、ロマンスについての曲らしい。
人生が現実でないようだ
君の部屋に二人で行かない?
「あなた、飲みすぎよ」と君は言う
ここのフレーズだけで、情景が浮かんでくる。ぼくたちもこんな夜を何度も過ごしてきたはずだ(だよね?)。理性が邪魔になる夜もある。というか、若い頃は理性自体がなかったりもする。過度な飲酒と稚拙な欲望。
彼は知ってる、生き残るために殺すのは構わないと
だから紙幣のために死人を沢山出す
もっと血を啜ろう、一日3時間走ろう
都市生活者の欺瞞について言及して、どっぷり自失の世界に突っ込んでいく( 選択の余地はもう無い、もう手遅れだ)。
世界は終わったけど俺は気にしない
この「気分」がこの曲を動かしているのは間違いない。だれかと二人っきりで過ごした夜、世界は何度も終わっている。そして目が覚めたとき、終わったはずの世界が「現実」という超でっかい障害となって……いや、そんなことを言うのはよそう。日曜の朝の憂鬱は彼らの先輩が歌っていたじゃないか。今夜は飲もうぜ。そして踊ろう(この曲が何度もクラブで流れていた理由がわかった気がする)。もう世界は終わったんだもの。
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