世紀のアンフェタミン・ソング
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのセカンド・アルバム『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』のタイトル・トラックであり、オープニング・ナンバー“ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート”
1968年、アンディ・ウォーホルとニコから離れたヴェルヴェッツは、オリジナル・ヴェルヴェッツ全開のダークで破壊的なアルバムを創る。収録曲はとにかく過剰。即興性を活かしたノイズの美学を貫く。
“ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート”は、若干ズレたようなコーラスから入り、音割れしたベースとブギーな鍵盤の上に、ルー・リードのラリッた(狂った)ようなボーカルが乗る。
シンプルなコード進行なのにどこか“普通じゃない”ように聴こえる“ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート”
この曲のテーマは「アンフェタミン」
効果は、「覚醒」と「多幸感」
多くのロックンローラーを虜にした魔法のような薬の作用をヴェルヴェッツは音楽で表した。すなわち白い光/白い熱だ、と。
ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート 和訳
白い光
白い光が俺の心をかき乱そうとする
白い光
俺の眼を晦ませようとしてるんだ
白い光
ああ白熱が、俺のつま先までむずむずさせる
白い光
おお主よ、お慈悲を、白い光にはそれがあるのか
神のみぞ知るってやつさ
白い光
白い光が俺の頭を混乱する
白い光
ああ、白い光が俺を狂わせる
白熱
ああ白熱が、俺のつま先までむずむずさせる
白い光
ああ、白い光が、神のみぞ知る
やれよ
ううう、白い光が
俺がここで始めたこと、
きっとおまえも気に入るさ
ううう、白い光
あの印を見ろよ、あの印を
分からないのか、俺を死なせて
何も見えなくさせようとしてるのさ
ううう、白い光
見えるぜ、あそこを
通りを歩いていく自分の姿が
ううう、白い光
おまえの頭の上の方は死んじまった
もう使いものにならないぜ
白い光
友達に会いに行こうとする
白い光
白い光がおまえを狂わせる
白熱
ああ、白熱が俺のつま先までむずむずさせる
白い光
ああ、白い光が、神のみぞ知るのさ
白い光
ああ、白い光が俺の目の前を照らす
白い光
わからないのかい、まったく驚きだらけさ
白熱が
ああ白熱が、俺のつま先までむずむずさせる
白い光
ああ、白い光、教えてやるよ、神のみぞ知るのさ
やってみな
ううう、白い光
彼女はきっぱりこれをやったのさ
ううう、白い光
見ろよ、見ろよ……
感じてみろよ
ううう、白熱が
……誰も彼も
お袋さんを殺すんだ
ううう、白い光
彼女が来たぜ、来たぜ、みんなが俺を
走らせるんだ
やれよ
VELVET UNDERGROUND WHITELIGHT/WHITEHEAT TRANSLATED BY AKIYAMA SISTERS INC.E.
白い光がおまえを狂わせる――おまえの頭の上の方は死んじまった
畳みかけるルー・リードの言葉の放流。それがこの曲のすべてだ。
説明不要。この曲で歌っていることは「アンフェタミンはヤバイ」その一点。
俺の心をかき乱そうとする
俺の眼を晦ませようとしてる
俺のつま先までむずむずさせる
俺の頭を混乱する
俺を狂わせる
心をかき乱し、目をくらませ、足は痙攣し、頭は混乱する。これらが「アンフェタミン」の効果。視界は白。身体をつつむのは白い熱。もう「白い光」「白い熱」という言葉を生み出しただけで、この曲は大成功だよね。体験したことのない人間にもアンフェタミンの「感じ」が伝わってくるもの。
俺がここで始めたこと、
きっとおまえも気に入るさ
と、ニヒルに皮肉な感じで歌うルー・リードがかっこいい(スピリチュアライズドやプライマル・スクリームは大いに気に入ったはずだ)。
見えるぜ、あそこを
通りを歩いていく自分の姿が
このフレーズ後、主人公は混乱し幻覚のど真ん中に落っこちる。自他の区別がつかない彼は、「もう使いものにならない」
なぜなら、「おまえの頭の上の方は死んじまった」からだ。
白熱が
……誰も彼も
お袋さんを殺すんだ
こうして狂気の描写で物語の幕が閉じる。
凄いアルバムだぜ、『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』
一曲目から「コレ」だからね?
ラストの“シスター・レイ”まで、オリジナル・ヴェルヴェッツの美意識はとどまることを知らない。制限なしの破格な傑作。
次回は超長い“ザ・ギフト”です……!
コメント