福岡読書会 本とワイン ②宮沢賢治と日本ワイン

レビュー/雑記

やまなし

著者:宮沢賢治

「やまなし」は、1923年(大正12年)に『岩手毎日新聞』で発表された短編童話集。賢治の数少ない生前発表童話の一つ

「五月」と「十二月」

小さな谷川の底を写した二まいの青い幻灯です。

こんな出だしで始まる『やまなし』。

二枚の幻灯が写すのは「五月」と「十二月」の二場面。

登場人物は二匹の兄弟蟹。青白い水底でこんな会話をしている。

「クラムボンはわらったよ」

「クラムボンはかぷかぷわらったよ」

「クラムボンははねてわらったよ」

「クラムボンはかぷかぷわらったよ」

小学生のときに教科書で読んだ人も多いと思う。クラムボンは“かぷかぷ”笑う。

クラムボンとはなにか? おそらく長い間、考察され続けていたのだろう。インターネットで検索すると様々な回答が出てくる。英語で蟹を意味するcrabや、かすがい・アイゼンを意味するcramponに由来するとする説、アメンボ説、泡説、光説、母蟹説、妹のトシ説、全反射の双対現象として生じる外景の円形像説、ぼくが持っている『宮沢賢治 童話集』では、「あめんぼや、みずすましのことと思われる」と注がふってある。

まあ、作者が明かしていないのだから今後も我々が答えを知る機会はないだろう。

「クラムボンは死んだよ」

「クラムボンは殺されたよ」

「クラムボンは死んでしまったよ……」

「殺されたよ」

クラムボンは笑い、そして、死ぬ。笑った理由は「知らない」し、殺された理由は「わからない」

その後、コンパスのように黒く尖ったくちばしを持つカワセミが水中に侵入してきて魚をくわえて去っていく。突然の出来事に、二匹は恐怖にすくみ上がってしまう。

父蟹がやってきて「あれはカワセミだ」と、先ほど川に侵入してきた未知の生きものについて子どもたちに説明してやる。子蟹は訊ねる。

「お父さん、お魚はどこへ行ったの」

「魚かい。魚はこわい所へ行った」

父蟹は「心配するな」と慰め、「五月」の場面は終わる。

ここでは二つの死が描かれる。一つはクラムボン。一つは魚。

のどかな川底に突如やってくる不可解な「死」。

魚の死は、たった今まで存在していた生命がたやすくに失われてしまう自然の残酷さ(摂理)を描き、クラムボンの死は、自らも気づかないうちに子どもとして生きる時間は終わってしまうということを——イノセンスの消滅——を描いているように思える。

幼さは死に、「十二月」の場面になると、子蟹たちは成長している。

かにの子どもらはもうよほど大きくなり、底の景色も夏から秋の間にすっかり変わりました。

蟹の兄弟は遅くまで起きていて、どっちのほうが大きな泡を吐けるか競争をしている。

弟は「ぼくのほうが大きい」と言い、兄も「ぼくのほうが大きい」と返す。

議論がエスカレートしていくと、父蟹がやってきて「もうねろ」と二匹に声をかける。そのとき、“トブン”という音とともに、黒いものが川に入ってくる。

そのとき、トブン。

黒い円い大きなものが、天じょうから落ちてずうっとしずんでまた上へのぼって行きました。キラキラッと黄金のぶちがひかりました

兄弟は「カワセミだ」と警戒するが、落ちて来たものの正体はやまなしだった。

「どうだ、やっぱりやまなしだよ よくじゅくしている、いいにおいだろう」

「おいしそうだね、お父さん」

「待て待て、もう二日ばかり待つとね、こいつは下へしずんで来る、しれからひとりでにおいしいお酒ができるから、さあ、もう帰ってねよう、おいで」

「五月」に川へ侵入してきたのは「恐怖」と「死」だったのに対して、「十二月」にやってきたものが「期待」と「喜び」というのが面白い。

『やまなし』には余白がある。その余白は知識で埋めるべきではない気がする。

じゃあ、どう読むか? 描かれる謎や神秘を「ああでもない、こうでもない」と“二日ばかり待ってひとりでに”のマインドで遊ばせながら読むのが『やまなし』をおいしく読むコツかもしれない。

くらむぼんワイン 宮沢賢治への共感から誕生したワイナリー

日本が世界に誇るワインの銘醸地“山梨”

日本ワインの発祥の地である勝沼に100年以上の歴史を持つワイナリーがある。

それが、「くらむぼんワイン」

宮沢賢治の童話を由来としたワイナリーだ。

『くらむぼん』という名前は、宮沢賢治の童話『やまなし』で蟹が話す言葉に由来します。
人間と自然の共存、科学の限界、他人への思いやりを童話で伝えた宮沢賢治に共感し、この社名が名づけられました。

そして“くらむぼんワイン”は、勝沼のブドウ畑と自然が両立しつつ、
地域住民とワイナリーが協力し合っていく。
その中で地域の特産、甲州やマスカットベーリーAが日々の食卓に登るデイリーワインとして親しまれ、
和食文化の一端を担っていくことが私たちの願いです。

山梨ワイン

ワイン生産量日本一。ワイナリー数日本一。日本で最も有名なワイン産地。

日本ワインの約30パーセントを生産する山梨県には、ワイン造りに欠かせないある要素が備わっている。それは降水量が少なく、日照時間が長いということだ。さらに、盆地だから気温差もあり、ぶどう栽培にとって適した気候となっている。

ワイン造りの歴史は1874年から。明治新政府の高官がフランスなどのヨーロッパを視察しワイン産業の発展を目にした結果、殖産興業政策の一環としてワイン造りが奨励されたのがきっかけだ。

最初に造られたワインは赤ワインが山ブドウから、白ワインはその時すでに栽培が盛んであった勝沼産の甲州から。

その後も、ヨーロッパ品種の栽培に着手したり、アメリカ系のブドウ品種の導入を試みたりしつつ発展を遂げ、山梨ワインは「甲州」と「マスカット・ベーリーA」を軸に世界でもユニークなワイン産地となっている。

くらむぼん 甲州

グラスに注ぐと、レモン、柚子、ライム、橙、グレープフルーツ、ミラベル、フレッシュプラムのような香りが感じられます。

とてもフレッシュで果実味がしっかりしていて、ほのかな甘み(残糖感ではなく)と酸味のバランスが良いです。醗酵時のガスが残っていて爽やかな印象。甲州らしく、後味のほのかな塩味や苦みがアクセントになっている、すっきりした辛口です。

スタイル:辛口
ブドウ品種:甲州

ざっくり解説 甲州

・白ぶどう品種である

・クセが少ない

・すっきりしている

・香りは弱い

・特徴があまりない

・和食に合う

・シュール・リーすることが多い

 ※樽に沈殿する滓を取り除かず、その滓とワインを樽内で一定期間接触させる技法

・スキンコンタクトしたりもする

 ※果皮と果汁を長く接触させること

実践 色を見る

実践 香りを取る

実践 味わう

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