モービー・ディック・イン・ピクチャーズ 全ページイラスト集/マット・キッシュ ブックレビュー

歌詞考察
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「ザ・グレート・アメリカン・ノベル」『白鯨』の全ページイラスト化!

「ザ・グレート・アメリカン・ノベル(偉大なるアメリカ小説)」といえば、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』やナサニエル・ホーソーンの『緋文字』、そしてこの『モービー・ディック(日本でいうところの白鯨)』が挙げられると思う。

『白鯨』は、ハーマン・メルヴィルが1851年に発表した小説で、今でこそ偉大な小説と言われているが、発表当時はかなり酷評されたらしい。理由は長くて難解だったから。

ストーリーとしてはシンプルといえばシンプル。

ピークォド号の船長エイハブは、片足を食いちぎった化け物白鯨のモービー・ディックに復讐するために海に出る。その様子を船に乗った主人公のイシュメールが語るというもの。

どこが難解かというと、旧約聖書の引用やモチーフ(主人公のイシュメールもエイハブ船長の名前の由来もソレ)や、捕鯨に用いられる道具とか鯨から油を搾る手順の説明、鯨の生態、伝説、文献の検討などそんなのがやたらと続いたり、神と善悪の関係、善悪の問題、そんなテーマが語られたり、まあ、とにかく長くてしんどい。

しんどいんだけど、そこは「ザ・グレート・アメリカン・ノベル」偉大と呼ばれるだけの理由がある。

マット・キッシュとは

このイラスト集の作者マット・キッシュとは何者か?

1969年生まれ、オハイオ在住のこの男は『白鯨』に憑りつかれていた。

少年時代に『白鯨』の映画を観て、イラスト付きのペーパーバックを与えられ、貪るように読み、

高校時代には原作を八、九回読む。

そして大学の学部時代に何度か読み、高校の英語教師時代に読み、書店の副店長をしながら二、三度読んで、大学院に入ってまた読む。

筋金入りの『白鯨』オタクである!(笑)

マット・キッシュは言う。

何でそんなにのめり込んでるんだい、と友人たちからはよく不信の目で見られる。僕は学者でもないし、もう教育者でもないのだから無理もない。これまでに思いついた最良の答えは、僕にとって『モービー・ディック』はあらゆることが書いてある本だということだ。神。愛。憎しみ。自分が自分であるということ。人種。性。ユーモア。妄執。歴史。仕事。資本主義。いくらでも挙げられる。

マット・キッシュ モービー・ディック・イン・ピクチャーズ あとがき p578 柴田元幸訳

神。愛。憎しみ。自分が自分であるということ。人種。性。ユーモア。妄執。歴史。仕事。資本主義。

この本が偉大だと言われるところだ。『モービー・ディック』はあらゆることが書いてある、マット・キャッシュはそう語る。

そんな、白鯨憑りつかれ男マットはある日、この『白鯨』の全ページにイラストを描くことを決める。頭から離れないビジュアル・イメージをどうしても書いてみたくなったそうだ。

自分では自分をアーティストとは思っていないと語るマット(職業は図書館員)は、一日一点、仕事後や合間に毎日イラストを描くことを自分に課す。

全ページ、つまりは552点。ということは、552日間毎日イラストを描くということだ。

そして書き上げたイラストを毎日、自身のブログにアップしていくようになる。

それが世界の『白鯨』マニアやブロガーの反響を呼び、出版化されたのがこの本である。

『白鯨』に対する愛と妄執に貫かれた奇書

時にポップに時に抽象的に、コラージュされたイラストがフルカラーで続く。マットはゼルダの伝説なんかのビデオゲームも好きだったみたいで、時々そんなテイストも顔を覗かせる。

オブセッション、日本語で言うと妄執。憑りつかれて離れないこと――。この本はまさにソレだ。『白鯨』に対する愛と妄執に貫かれた奇書。

自分がアーティストではなくても、なにか一つめちゃくちゃ(憑りつかれるような)やりたいことがあれば、こんな素敵な作品が生まれるんだ。

とても勇気の出る、そして『白鯨』を読むのがしんどい人にはうってつけの素晴らしい作品である。

※訳は安定の柴田元幸。この人が関わっているプロジェクトには外れがないと個人的に思っていて、それでこちらも購入しました。ポール・オースターの『4321』もなるべく早くよろしくお願いします。。

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