阿古真理/おいしい食の流行史 ブックレビュー

レビュー/雑記
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世界最速レビュー#23 阿古真理著『おいしい食の流行史』

2023年8月23日ごろ、阿古真理のエッセイ『おいしい食の流行史』が発売されます。

「世界最速レビュー」シリーズとは、発売日まもなく書店員がその小説の見どころをたっぷりお伝えする連載です。

おいしい食の流行史|青幻舎 SEIGENSHA Art Publishing, Inc.
著者:阿古真理|定価:1,980円(本体1,800円)|ISBN:978-4-86152-923-8 C0021|趣味・実用・ガイド 暮らし・料理|「食」をたどれば日本が見える!

「食」をたどれば日本が見える!

NHKラジオ『カルチャーラジオ 歴史再発見』で放送された「食の流行から見る暮らしの近現代史」。
Twitterでも話題になった同番組を書籍化。
幕末の開国期から20世紀末にかけた、激動の明治〜昭和の3大洋食や外国からの新たな食文化や家庭料理の変化を描き、さらには平成以降のティラミスやナタデココといった懐かしいスイーツブームも。最近は、『孤独のグルメ』『きのう何食べた?』などの食にまつわるドラマや漫画も増えています。
そうした食のトレンドを、時代の変化や社会状況を踏まえながらわかりやすく解説。
これまで、外食やパン、家庭料理、家庭における家事シェアと女性の問題を、研究、執筆してきた著者ならではの、これまでにない食文化を横断した一冊です。

■目次
第1章 幕末と「獣肉食」ブーム
第2章 あんパンに始まる、日本の菓子パン・総菜パン
第3章 大正時代の「三大洋食ブーム」
第4章 戦後〜高度経済成長期の「台所革命」
第5章 キッチンと料理の関係
第6章 一九七〇年代、外食のトレンドと女性たちの変化
第7章 一九八〇年代、「エスニック」料理ブーム
第8章 デパ地下の誕生と「男女雇用機会均等法第一世代」
第9章 平成のスイーツブーム
第10章 パンブーム~日本人とパンの新しい関係~
第11章  韓国料理の流行から見えてくるモノ
第12章 「食ドラマ」の変遷に見る時代の変化
第13章 令和に起こったご飯革命

阿古真理(あこ・まり)
作家、生活史研究家。1968年、兵庫県出身。食や暮らし、ジェンダー問題等をテーマに執筆。著書に『小林カツ代と栗原はるみ』(新潮新書)、『日本外食全史』『家事は大変って気づきましたか?』(亜紀書房)、『昭和の洋食 平成のカフェ飯』(筑摩書房)など多数。

青幻舎

『おいしい食の流行史』との出会い

こちらの書籍『おいしい食の流行史』の発売案内が私に届いた時、そのジャンル区分は、「エッセイ、随筆」、「食」となっていました。

ほんわりとした食のエッセイを想像していたのですが、実際に『おいしい食の流行史』

を読んでみると、歴史人文書のように重厚さのある1冊です。

江戸時代まで遡り、令和の時代までを、食文化で辿り繋いでくれる素敵な書籍『おいしい食の流行史』。

その内容は自分がふだん食べているメジャーな料理の豆知識をどんどん与えられるようで、とても面白いです。

饅頭のようなパンからあんぱんへ

日本人が昔パン作りに挑戦しようと思った時、この本『おいしい食の流行史』では饅頭のようなものが出来上がったと記載されています。

その後、あんぱんの人気が広がり、東京・木村屋のあんぱんが大流行。

おそらく私たちも日頃親しんでいる「あんぱん」は、この木村屋さんのあんぱんの頃に成り立ったものだと思われます。

日本人がパンの魅力に気がついて、パン作りを真似てみようと思ったら、うっかりお饅頭のようなものができてしまったというエピソードになんだか和みました。

逆に日本に饅頭文化があったからこそ、「パンに具材を包み込む」という発想が生まれ、菓子パンや惣菜パンを生み出したのだというお話もあります。

日本のパンはかつて、西洋の真似事に変わりなかったかもしれません。

しかし、それでも日本のパン作りであったからこそ、生まれたパンの文化も確かに存在したのだと思うととても誇らしく感じました。

カフェの始まりへ

日本国内でお酒や洋食を出すお店ができるようになってくると、ぽつりぽつりとカフェができ始めるのだそうです。

1910年あたりには、銀座で様々な名店カフェがオープンします。

現代の日本でも「カフェ」「喫茶店」「純喫茶」とお店を少しずつ区分する言葉がたくさんあります。

それぞれのお店の中に異なった雰囲気があり、タイムスリップするような感覚を楽しませてくれるカフェ、喫茶の文化。

歴史の最新版となる現代の日本にあるカフェも、完璧に西洋型のカフェを反映しているわけでは無いのです。

だからこそ、外国らしいおしゃれなカフェと、昭和レトロ、大正モダンをうたったカフェとを、どちらも楽しめる。

この日本のそんなカフェ文化を、私は慈しみたいと思います。

時代の変化にのせられて

『おいしい食の流行史』を読んでいると、1つの料理の発生や流行の成り立ちには、すべて意味があるのだということがわかります。

流動的に文化が流れているのを実感することができるこの新刊書籍『おいしい食の流行史』。

食だけではなく様々な歴史が、1つの要素が異なるごとに大きく変化していくことだと思います。

そのことを改めて考え、身の回りの一つひとつの要素について見つめさせてくれる。

そんな素敵な機会を読者に与えてくれる食のエッセイ『おいしい食の流行史』。

歴史人文書のように濃厚でありながら、身の回りの美味しい「食」についてを語ってくれる素敵な書籍です。

文:東 莉央

東 莉央

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